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「生物と無生物のあいだ」の感想・レビュー!生命を哲学する本

生物と無生物のあいだ 本の感想
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「生物と無生物のあいだ」は2007年のベストセラー新書です。

長年読みたいと思っていたのですが、ようやく読んだので感想を!

「生物と無生物のあいだ」の内容は?

「生物と無生物のあいだ」の作者は、分子生物学の専門家である福岡伸一さん。

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私はタイトルから勝手に推測して、生物と無生物のボーダーラインにいるような微生物を、「こいつは生物か無生物か?」と論じる本なのかと思っていました。

読んでみると、そうではなくて、タイトルに補足を入れるなら「生物と無生物のあいだの生物について」ではなくて、「生物と無生物のあいだにはどんな違いがあるのか?」という内容の本でした。

本の最後には、この問いに対する解答が書かれていますが、本全体の構成は、この問いをまっすぐに追い求めるのではなく、関係のある話を挟みながら、ややエッセイ的な要素も入りながら、うろうろしながら結論にたどりつく感じです。

「寄り道」のような話が所々で入ることで、内容は簡単ではないながらも、私のような文系人間でも読みやすく、理系の本にありがちな、近寄りにくい雰囲気がないのが魅力です。

福岡さんは科学者と同時に哲学者でもある

植物

福岡伸一さんの本は、他に「動的平衡」を読んだことがあるのですが、福岡さんは、理系の学者でありながら、ご本人の生物研究をもとに、生物・生命観について独自の哲学を持っていらっしゃいます。

理系作家が数多くいる中で、福岡さんの著作が魅力的なのは、その哲学があるからだと感じます。

科学者の役割は、機械的・数字的な世界観で、誰が見ても正しいと思えるような法則やシステムを発見することだと思われがちです。

もちろんそのおかげで現代文明は発達し、恩恵を受けている私たち人間は、数世代前とはくらべものにならないような快適な生活を送っています。寿命も伸びまくりました。

ですがその反面で、「この世界や生命は何なのか」「なぜ世界や生命はこうなのか」「生きるとはどういうことなのか」といった哲学は、置いてけぼりにされている感じがあります。

私たちが生きるこの100年くらいの間は、哲学なき科学の発達が、デザイナーベイビーやAIによる人間支配など、SF的なディストピア世界をもたらす所まではいかないでしょう。

しかし、私たちが目先の快適さにとらわれて、哲学不在のままで科学を発達させたツケは、いつか未来の世代が背負うことになるかもしれません。

「時間」は生物に与えられたプレゼントなのかも…

クローバー

「生物と無生物のあいだ」で、もう一つ感銘を受けたのが、生物と無生物を隔てる「時間」という概念です。

機械には時間がない。原理的にはどの部分からでも作ることができ、完成した後からでも部品を抜き取ったり、交換することができる。そこには二度とやり直すことのできない一回性というものがない。[中略]生物には時間がある。その内部には常に不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度、折りたたんだら二度と解くことのないものとして生物はある。

福岡さんは、現代人の多くが抱いているかもしれない、生命=機械論(生命は部品から成り立つ機械のようなものだと考えること)に対し、機械にはなくて生物にあるもの…「時間」をいう概念を強調します。

これ、結構、目からウロコでした。

私は生命=機械論はあまり好きではないのですが、最近、AIに関する本や、ゲノム編集に関する本を読んでいると、もっと科学技術が発達しまくれば、生命の謎は完全に解けて、いつか生命は機械的に扱われるようになるんだろうな…と思っていました。

でも、福岡さんのおっしゃる通り、生物が持つ「時間」という概念を、純粋な人工物は持つことができるのだろうか?という気はしてきますね。

「時は金なり」ということわざがありますが、時間は私たち生命にプレゼントされた、お金以上の、もっと尊い何かなのかもしれない…。

もちろん人工物も時の経過と共に、錆びたり、色あせたりしますが、生物が刻一刻と変化しているスピードと複雑さとは、くらべものにならないでしょう。

そしてよく考えると、「純粋な人工物」なんて存在しないんですよね。人間は、まったくの無から何かを作り出すことだけは、おそらくできないでしょう。

何だか謙虚な気分になりますね…。

テクノロジーの発達で、私たち人間は、歴史に学ぶのが難しいような時代を生きることになるのは間違いないでしょう。

そんな現代を生きる私たちに、福岡さんのような「哲学を持った科学者」の本は、何かヒントを与えてくれるのではないか、そんな風に思います。

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