2023年はうさぎ年!
…私の人生はうさぎとはあまり縁がありませんが、せっかくうさぎ年なので、何かうさぎに関する思い出かないか考えてみました。
すると、子どもの頃に「うさぎたちのにわ」という絵本が好きだったことを思いだしました。
大人になってから考えると、深い内容の絵本だったなあ…と。
「うさぎたちのにわ」はどんな絵本?
「うさぎたちのにわ」は、オランダ生まれで、アメリカやイタリアで活躍した絵本作家、レオ・レオニが描いた絵本です。
レオ・レオニの代表作は「スイミー」「フレデリック」などです。
大きいサイズの絵本で、ほとんどひらがな書きなので、小学校に上がる前の幼児~小学低学年向けの作品です。
かんたんなネタバレなしのあらすじは、こんな感じです。
ハラハラドキドキの展開ですが、この話はネタバレすると面白くないので、ここで止めておきます。
美しい庭、りんごを食べるな、ヘビ…旧約聖書の創世記、アダムとイブの楽園追放が意識されたお話ですね。
絵本のテーマは、「未知との遭遇」「古くて理由がわからないルールは順守すべきなのか?」「他者を信じること」…などなどです。
子どもの時には展開が非常に面白いので印象に残った本ですが、大人になってから思い出すと、物語にこめられた深い哲学に考えさせられます。
旧約聖書の「楽園追放」との違いは?
さて、めっちゃ旧約聖書の楽園追放のストーリーと似た感じで進む「うさぎたちのにわ」。
美しい庭で幸せに生きる二匹のうさぎ→年寄りうさぎから「りんごを食べるな」の忠告→ヘビにりんごを勧められて食べてしまう→罰のように天敵のキツネが現れる…
しかし、この後の展開は楽園追放とは違います。
うさぎたちはりんごを食べてしまったけど、ヘビと協力しあってキツネを撃退してしまうのです。
これ…キリスト教圏で生まれ育った作者さんの、楽園追放の物語への抵抗感が現れているのかなと思います。
楽園追放では、りんごの実を食べたことで人間は知恵を身につけ、まるで知恵が悪いことであるかのように、罰として楽園を追い出されてしまいます。
ですが、人間にとって知恵とは悪いものではないのではないか…神が人間に知恵をつけさせたくなかったのは、人間が無知で思慮が浅い方が支配しやすいからなのではないか…。
支配者に作られた幸せな箱庭(≒他者の価値観)で生きるより、自らの意志を持って苦難な道を歩く方が人生は深くなる。
そんな作者のメッセージが感じられます。
スイミーとの共通点
「うさぎたちのにわ」はメッセージ性の強い作品ですが、ストーリーに堅苦しさがないのは、うさぎたちがキツネを撃退する方法が奇想天外だからです。
うさぎたちの目の前に口を大きく開けたヘビが現れたとき、読者は「キツネじゃなくてヘビに食べられてしまうのか?」とドキドキします。
しかし、うさぎたちはためらうことなく、ヘビの口の中に自ら飛び込んでいくのです。
ヘビが丸ごと入ったうさぎたちの形で怪物のような形になり(これは実に絵本的)、キツネが見たこともない怪物を見て、驚いて逃げていくんですね。
要するに、(りんごを食べてたぶん知恵がついた)うさぎたちは一瞬でヘビの意図を察知して、ヘビを心から信用して口の中に飛び込んでいく、と。
うさぎたちのヘビへの信頼感も素敵ですし、撃退方法自体も意外で子どもごころに大変面白く感じます。
集団で協力し合って別の生き物のような形を作る…というのは、スイミーでも見られるモチーフですね。
他者と手を取り合って困難を乗り越えていく…とてもシンプルなメッセージが、面白い形で描かれています。
まとめ
うさぎ年ということで、「うさぎたちのにわ」について考えてみました。
昔からの言い伝えに耳を傾けることも大事だけど、時代が変わると変わっていくルールもある。
どちらにしても、立場が上の人が言うことを思考停止状態で聞き入れるのではなく、どうすべきかは自分の頭で考えて自分の人生を切り開いていかなければならない。
うさぎ年は、そういう年にしていきたいな!と思います。