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「アルジャーノンに花束を」読書感想!「面白い」ではなく「スゴイ」本

本の感想
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半世紀以上前に刊行されたかなり古い本でありながら、よくメディアで取り上げられロングセラーとなっている「アルジャーノンに花束を」。

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ようやく読みました!

さっそく感想を書いてみます。

これは「面白い」ではなく「スゴイ」本

まずはネタバレなしのザクっとした感想を。

「アルジャーノンに花束を」は、それほど「面白い」とは感じなかったです。

たぶん作者が発しているメッセージがそれほど私に響かなかったり、登場人物の誰にも共感できなかったり、物語の先が予想通りだったり…という点で、小説として面白さはなかったです。

ですが、非常に「スゴイ本」だと感じました。

ベストセラーになっている本ではありますが、「先が気になってハラハラドキドキ」みたいな物語ではありません。

ただ読み終わった時に何かに圧倒されている…そんな本です。

「アルジャーノンに花束を」は何がスゴイ?

この先は「アルジャーノンに花束を」のネタバレを含みますのでご注意ください

では、「アルジャーノンに花束を」の何がスゴイのか。

主人公のチャーリイは知的障害を抱えた男性で、知能を高める手術を受けます。

チャーリイが研究チームのために書き残した「経過報告」が、そのまま小説の形をとっています。

その「経過報告」が、知能が高まるにつれて文章が変わっていく…それがあまりにも自然で、まるで本物の「経過報告」を読んでいるみたい…つまり「アルジャーノンに花束を」はSF小説であるのに、ノンフィクションみたいに思えてしまうのです!

途中で「コレって実話じゃないよね…?」と確認してしまいましたよ

最初は幼児が書いたような文が、大人の文章になっていき、IQが180くらいに達したくらいの時の文章は難解な論文のような文章…。

この移り変わりが自然であるだけでなく、一人の人間である作者がこんなに文章を書き分けられるのがスゴイです!

「アルジャーノンに花束を」は英語で書かれているので、翻訳者の力量もスサマジイということなのでしょうね。

チャーリーの運命は実は我が身

私は「アルジャーノンに花束を」が、世界的なベストセラーで、日本でも半世紀以上経ってもベストセラー小説であることには理由があると思っています。

その理由とは…実はほとんどの人間にとってチャーリイのたどった運命は他人事ではないということです。

チャーリイは外科手術を受けることによって瞬く間に天才となり、そしてその後、同じスピードで知能が退行していきます(これがこの手術の欠陥であることが後で判明した)。

手術を受けた後は自分が天才になれることを楽しみにしたり、疑ったりしています。そして知能の退行が始まってからは、その恐怖と戦い…やがてその恐怖も感じられなくなっていきます。

チャーリイにとってはそれがたった9ヶ月くらいの間に慌ただしく起こりましたが、私たち人間のほとんどは、一生をかけてチャーリイと似た道をたどります。

言葉を知らない赤子の状態から大人になり、そして人生の間に育ててきた自分の知能はやがて加齢とともに退行し死んでいく…。

チャーリイが自分の知能が退行する恐怖を味わったように、私たちも毎日そのことを考えているわけではありませんが、未来にやってくる知能の低下とその先の死に恐怖を抱いています。

そしておそらくチャーリイと同じようように、知能が失われていくにしたがって、それを失う恐怖も忘れてしまう…。

どうせ避けられない運命だし、最後に怖い思いをしないのならそれでいいという考え方もあります。

私はそれでもやはり、未来は怖い。

「アルジャーノンに花束を」という物語にはチャーリイの運命を通して、自分の運命をも再確認したような…そういう骨太さがありました。

最後の言葉が世界を肯定できるか?

そんな絶望的な物語でありながら、「アルジャーノンに花束を」のラストは素敵です。

最後の経過報告…これはおそらく、チャーリイが最後に世界に発したメッセージとして受け取ってよいと思いますが、チャーリイは最後の最後にこう書き記します。

ついしん。どーかついでがあったらうらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやてください。

物語を読んだ人には既知のことですが、アルジャーノンとは、動物実験でチャーリイと同じ知能を高める手術を受けたネズミです。

アルジャーノンは知能が高まったあとに狂暴化して知能の退化が起こって死んでしまいます。チャーリイの運命を先にたどった感じです。

チャーリイが最後に世界に発したメッセージは、「死んだネズミ」という、とても小さな存在である他者に対する配慮です。

私たち人間は程度の差はあれ、チャーリイがたどった運命を避けられない。

その時、最後にお別れしていく世界に対して、チャーリイほどやさしさに満ちた…大げさに言うなら世界を肯定するようなメッセージを発することができるだろうか…。

私は今のところ自分にそれができる気がしません。

ただし「それができたらいいなあ」とは思います。そう思っていることだけでも現時点ではじゅうぶんかな、という感じですね。

まとめ

「アルジャーノンに花束を」の感想でした。

私にとって好みの物語ではありませんでしたが、それでも小説そのものの出来の良さ、テーマの普遍性に圧倒され、そして最後はせつなさの中に感動がありました。

「人生で読むべき1冊」であることは間違いないかな、と思います。

この先自分を飲み込むであろう運命に、私はどう対峙していくのだろう…それに思いを馳せるだけでも、少し心の準備ができる気がします。

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