高校生の読書感想文におすすめの本をご紹介します。
ほとんど私が読んだことがある本です!
定番
まずは高校生が読書感想文を書くために読む本として、定番の本をいくつかご紹介します。
舟を編む
三浦しをんさんの「舟を編む」は、辞書を作る人たちの奮闘を描いた小説です。
2012年の本屋大賞(書店員さんが「ぜひ売りたい」という本を選ぶ賞)を受賞したベストセラーです。
お仕事小説ではありますが、日本語についての深い考察、辞書が果たす役割、あたたかいチームワークなど、高校生が読書感想文を書きやすいテーマが満載です。
また作者の三浦しをんさんは、深いテーマの物語を軽やかに明るくまとめあげるのが得意な作家さんで、あまり本を読みなれていない高校生でも、最後まで楽しく読める小説だと思います。
博士の愛した数式
「博士の愛した数式」は、記憶が長く続かない数学者、数学者のところに派遣された家政婦、その息子の3人の絆を描いた小説です。
初代の本屋大賞(2004年)を受賞したベストセラー小説で、現在では課題図書の定番ともいえる名作です。
物語のところどころに数学の面白さ、不思議さ、美しさなどが描かれ、数学が好きな人は楽しく読めて、数学が嫌いな人は少しでも数学の魅力がわかるようになるかもしれません。
数学について書かれた部分を中心にすると、感想文を書くテーマは見つけやすいです。
ただし、高校生が読んで物語展開が「面白い」とは言いがたい本なので、感想文を書く本として選ぶかどうかはよく考えた方がよいかも。
車輪の下
「車輪の下」はヘルマン・ヘッセの代表作のひとつで、世界的名作です。
田舎で神童ともてはやされた少年が、英才教育によって人生を少しずつ狂わせていく…20世紀初頭に書かれたドイツ文学ですが、現代の日本人でもまったく実感できる問題を扱っています。
「外国文学はとっつきにくい」というイメージがあるかもしれませんが、「車輪の下」はそれほど長くなく、物語展開もスピーディで読みやすいです。
海と毒薬
「海と毒薬」は、戦時中に捕虜に対する人体実験を行った、医学生たちの苦悩を描いた小説です。
戦争、人体実験、医療倫理…非常に重いテーマを扱っていますが、若いうちに一読する価値のある1冊です。
遠藤周作の名作としては他に「沈黙」がありますが、「海と毒薬」の方が話が長すぎず、感想文を書くテーマを探しやすいです。
こころ
高校生の読書感想文の定番中の定番といえば、夏目漱石の「こころ」。
私も高校時代に課題図書として読まされました。
「読まされる本」というイメージでとっつきにくさがあるかもしれませんが、実は小説自体は引き込まれるストーリー展開で、文章も読みやすく、それほど堅苦しくありません。
日本人の定番本ですが、大人になってからなかなか「読もう」と思う本ではないので、高校時代の読書感想文用として一読しておいてもいいかも。
高校生が主役!青春小説
高校生にとって、主人公が同年代の高校生である小説は、感情移入しやすくてスラスラ読めるのではないでしょうか。
高校生が主役の青春小説で読書感想文も書きやすそうな本をいくつかピックアップしてみました。
桐島、部活やめるってよ
タイトルが印象的な「桐島、部活やめるってよ」。
若い人たちに人気の作家、朝井リョウさんのデビュー作です。
「バレー部主将の桐島が部活をやめる」という情報が、多感な高校生の心に小さな波を広げていく…みずみずしい感性にあふれた小説です。
スクールカースト・恋愛・友情・家族…いろいろなテーマが詰まっています。
葡萄が目にしみる
「葡萄が目にしみる」は林真理子さんの自伝的と言われる小説です。
容姿にコンプレックスを持つ、感受性や自尊心の強い女子高校生の、葡萄のように甘ずっぱい日常を描いた傑作です。
1984年と古い時代に刊行された小説ながら、現代の女子高校生でもじゅうぶんに共感できるストーリーです。
ツナグ
「ツナグ」は人気作家・辻村深月さんの代表作。
主人公の高校生男子は、死者に一度だけ合わせてくれる立会人「使者(ツナグ)」という役割を果たしています。
死者に会えると聞くと感動的な物語を想像するかもしれませんが、死人に口アリの世界は結構シビアです。
ですが読後感はどこかさわやかな気持ちになれる、不思議な小説です。
夜のピクニック
「夜のピクニック」は恩田陸さんの本屋大賞受賞作となったベストセラー小説です。
夜通し長い距離を歩きとおすという、一風変わった学校行事「歩行祭」を描いています。
夜の長い散歩という非日常的なイベントを通して、高校生たちの微妙な人間関係や心の動きを描いた青春小説です。
ぼくは勉強ができない
「ぼくは勉強ができない」は1993年に刊行された山田詠美さんの小説です。
当時の中高生女子に山田詠美さんの小説は大変人気がありまして(私がこの世代)、クラスの女子で漫画みたいに回し読みされていました。
タイトル通り、勉強ができなくて(でもモテる)、学校の窮屈さに疑問を持つ男子高校生を軽やかに描いています。
時間がないときに!短い本
もうすぐ感想文の提出日!!!
…と、時間がない場合でも、高校生が読書感想文を書きやすい、短くてすぐ読めるヘルプ小説(?)あります!
山椒魚
「山椒魚」は5分あれば読めます。
非常に短い話なのですが、この短さの中に人生のエッセンス的なものがギュッと詰まっていて…最後の蛙のセリフをどう解釈するか、人によっていろいろな感想がありそうです。
高瀬舟
「高瀬舟」は、安楽死という重いテーマを扱った短編小説で、5分あれば読めます。
個人的には森鴎外の文章があまり好きではない…けど、扱っているテーマ自体は興味深く、読書感想文として自分の考えを書きやすい小説です。
城の崎にて
「城の崎にて」は志賀直哉の短い小説で、10~15分あれば読めます。
交通事故で危うく死にそうになった後の療養を描いた私小説(エッセイに近い)で、ストーリー展開自体は別段面白くありませんが、文章が非常に美しく、味わい深いです。
生と死がテーマで作者の考えもわかりやすいので、感想文が書きやすい1冊です。
スポーツに関する本
「高校ではスポーツに打ち込んでいる!」という高校生が、共感しやすいスポーツ関連本をご紹介します。
風が強く吹いている
「風は強く吹いている」は、三浦しをんさんが書いた箱根駅伝小説です。
主人公たちは大学生ですが、高校生でもじゅうぶんに楽しく読めます。
仲間の大切さが大きなテーマですが、コミカルな描写が多く、堅苦しさがないのが魅力です。
あの夏の正解
「あの夏の正解」は、2020年にコロナ禍で夏の甲子園が中止となった時、高校球児たちは何を考えどう動いたのか…を書いたノンフィクションです。小説ではありません。
書き手は人気作家で、自身も強豪校の野球部だった早見和真さん。
正解などない問いに、ひとりひとりの高校球児や指導者が、キレイごとではなく真摯に向き合った姿に感銘を受けます。
理系本のおすすめ
「理系の本」で読書感想文を書きたいという場合に、おすすめの本をご紹介します。
生物と無生物のあいだ
生物学者・福岡伸一さんのベストセラー「生物と無生物のあいだ」。
理系本にもかかわらずベストセラーになっただけあって、この本は面白いです!
福岡さんの鋭い感性はまるで哲学者のようで、文系でもじゅうぶんに興味深く読める1冊です。
働きたくないイタチと言葉がわかるロボット
AIに関する入門書を読むなら「働きたくないイタチと言葉がわかるロボット」。
毎日の労働が大変なイタチたちが、言葉がわかるロボット(≠AI)を作って代わりに働いてもらおうとしますが…そのロボット作りに苦労します。
その苦労の理由を考えながら、AIや言語の本質にせまっていく…という内容で、中身は難しいですが、なるべく簡単な言葉でわかりやすく書かれていて、文系にもおすすめです。
ロウソクの科学
「ロウソクの科学」はノーベル賞受賞した科学者、大隈さん(2016年)、吉野さん(2019年)が、若い頃の愛読書として挙げた本です。
課題図書としても定番で、私も高校時代に課題図書として読まされましたが、正直………面白くなかった…。
ですが私は文系ですので、理系の方なら楽しめるかもしれませんし、もしかしたらこの本がきっかけで科学の道を究めることになるかも…!?
読書好きにおすすめしたい本!
ここからは読書好きの高校生の読書感想文用に、個人的におすすめしたい本です!
ソクラテスの弁明
「ソクラテスの弁明」は難しそうだと感じるかもしれませんが、内容はシンプルでわかりやすく、結構短い話なので、最初の哲学書として読むのにおすすめです。
哲学的・倫理的な問題がギュッと詰まっていて、感想文を書きやすいというのもおすすめポイントです。
私が今まで読んだ中で、ラストが一番好きな本だったりします。
なるべくわかりやすい翻訳を心がけている、光文社新訳文庫版がおすすめです。
ペスト
カミュの「ペスト」はコロナ禍で脚光を浴びた小説です。
感染症が蔓延する町で、人々がそれぞれの立場・価値観から自らの生き方を決める姿にいろいろ考えさせられます。
カミュの作品は「異邦人」が有名ですが、読書感想文を書くなら「ペスト」の方がテーマをしぼりやすいと思います。
寛容論
ヴォルテールの「寛容論」は、カトリックが支配的な町で新教徒が冤罪に追い込まれた事件をきっかけに、自身もカトリック教徒であるヴォルテールが、カトリックの不寛容さを自己批判する本です。
自分とは違う宗教・価値観・共同体に属する他者に対し、不寛容さが増していると言われる現代社会。
そこに生きる私たちが、ぜひ一読しておきたい本です。
わたしを離さないで
「わたしを離さないで」はノーベル賞作家カズオ・イシグロの代表作です。
移植医療用の臓器提供者として施設で育てられたクローン人間たちが描かれる、近未来小説です。
非常にせつない物語ですが、人間を手段として扱う方も、扱われる方も、同じ人間…頭に浮かぶさまざまなことをまとめるのは難しいですが、読書好きの高校生にはおすすめしたい本です。
罪と罰
ドストエフスキーの小説は、テーマが重くて深い上に長編で、読みごたえがあるものが多いです。
「カラマーゾフの兄弟」「悪霊」は非常に面白いのですが、感想文が書きやすい本ではないので、高校生におすすめするなら「罪と罰」。
「世界が良くなるための殺人は許されるのか?」…人間の永遠の問いを投げかけている名作です。
まとめ
高校生の読書感想文におすすめの本を一気にご紹介しました。
たくさんありすぎてどれを選べばよいかわからない!
…という場合は「舟を編む」が読みやすい・面白い・感想文書きやすい!…なのでおすすめです。
「舟を編む」は長い…という人には、「桐島、部活やめるってよ」が好き嫌いがなさそうな小説なのでおすすめです。
「もうマジで時間がない!」という人は、「山椒魚」を読んで最後の蛙のセリフについて考えた感想文を書くのがおすすめ。
「山椒魚」みたいに短い小説は、電子書籍で読むのもおすすめです。
「もうちょっと簡単な本が読みたい」という方は、中学生向けの読書感想文おすすめ本から選ぶのもアリだと思います。