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コンラッド「闇の奥」感想文!ハッピーエンドという嘘

闇の奥 本の感想
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コンラッド「闇の奥」を読みました。

さっそく感想文を書いてみます!

「闇の奥」を手に取ったきっかけは?

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私は表面上は「明るい人」とよく言われますが、結構「根暗」である自覚があります。

「根」が暗いわけですから、暗いのは頭の中で考えていることだけで、口から出している言葉はそれほど暗くないので、それほど実害はない…と自分では思っていますっ!

根が暗い人間が好んで読む本は…基本的には感動モノではなくて、内容が暗い本なんです。

そんな私ですから、「闇の奥」というタイトルの本は昔から気にはなっていました。

「闇の奥」に書かれた内容は全然知らなかったんですけどね。

この「闇の奥」を読むきっかけになったのは、ウィーンに旅行した際に、印象に残った「シャルロッテの肖像」という絵です。

シャルロッテはハプスブルク皇帝ヨーゼフ1世の弟に嫁いだ、薄幸の人生を送った女性ですが、シャルロッテのことを調べているうちに、実兄にベルギー国王レオポルド2世という人物がいることを知りました。

このレオポルド2世は、彼が私有した「コンゴ自由国」において、残虐な植民地支配が行われたことで悪名高い国王なのだそうです。

「コンゴでの残虐な植民地支配を描いた作品として『闇の奥』がある」というのを知り、

昔から気になっていた本だけど、ついに読んでみよう。

と、決心しました。

ウィーンで見た一枚の絵から、一冊の小説へと道が続いて行きました。

「闇の奥」はわかりにくい小説でエンタメ要素がない

ここからは「闇の奥」のネタバレを含みますので、注意してください。

さて、「闇の奥」の感想ですが、ぶっちゃけ面白くはなかったけど面白かったという不思議な感想です。

まず、作品は私が思っていたような、植民地支配を批判・告発するような内容ではないです。

現地住民に課する苛烈な強制労働は、小説のあちこちに散りばめられていますが、しっかりと系統立てては書かれていません。

そのため「闇の奥」を読んで、コンゴでの残虐な植民地支配がどのようなものだったのかを知識として知ることはできません。

また小説の展開が、あまりストーリー仕立てになっていないです。

話し手マーロウはいろんなことを考えていますが、それが読者にわかりやすいようにまとめられていません。

「闇の奥」のストーリーを簡単に教えて!

と言われても

船乗りマーロウがアフリカの秘境に行きたくなって、そこで文明社会と違う世界を見て、船に乗って密林を進んで、なぜかある人物に固執して…

…なんかうまく答えられないんですよね。物語全体につかみどころがないんです。

今まで、「芥川賞と直木賞の大きな違いは、直木賞作品にはエンタメ要素がある」と聞いてもピンとこなかったのですが、この「闇の奥」を読んでわかった気がします。

「闇の奥」にはエンタメ要素がないんです。

私たち人間は、わかりやすい人物、わかりやすいストーリー展開という小説の方がずっと読みやすいということなんですね。

文明が持つ「わかりやすさ」の罠

アフリカの川

しかし、もしかしたらこの「わかりやすさ」というのは、文明人が陥りやすい落とし穴なのかもなと思いました。

「闇の奥」は文明とは遠い世界が舞台ですが、文明の手が入らない世界…「世界そのもの」は、人間が解釈しやすいようにストーリー化されていません。

世界と同じように、歴史などもそうだと思いますが、本当はわかりにくい混沌としたものなのに、人間は自分の頭に入りやすい形…わかりやすい形で捉えようとします。

その結果、単純極まる二元論…こっちは味方であっちは敵、こっちは善であっちは悪…というようなものが、今の現代社会には蔓延しているような…気もします。

「闇の奥」のような混沌とした小説を楽しめないのは、パターン化しすぎた世界で生きてきた結果、解釈できない混沌より、すでに解釈済みのものを、安易に求めるようになってしまっているのかもなあ…。

考えさせられるハッピーエンドという嘘

アフリカの夕日

さて「闇の奥」の感想として、「面白くなかったけど面白かった」と書きましたが、抜群に面白かったのが小説のラストです。

この小説の重要人物クルツは、もともと崇高な理念を持ちながら、アフリカの魔境で人間が変わってしまい、(明確には書かれませんが)残虐な現地支配を行って利益を上げます。

そして、死ぬ間際に「怖ろしい!怖ろしい!」という言葉を残します。

ですが、その言葉を聞いていた語り手のマーロウは、クルツの婚約者に対し「彼が最期に口にした言葉は―――あなたのお名前でした」と事実を偽って告げるのです。

この後の記述が面白いです。

俺は逃げる暇もなく建物が崩れてくると思った。天が頭の上に落ちてくる気がした。だが、何も起きなかった。この程度の嘘で天が落ちてくることはないのだ。もし公正を期して、クルツの最期の言葉を正直に伝えていたら、天は落ちてきただろうか。

マーロウは、ハッピーエンドという嘘をつきます。

あるがままのつらい事実を伝えることができず、ハッピーエンドに変えてしまったのです。

しかし、この程度の嘘では天は落ちてこない(=罰は当たらない)。むしろ、あるがままの厳しい現実を伝えた方が天が落ちてくる可能性があったのではないか、と独白します。

私たちは生きていく上で、世界を都合よく解釈すべきなのか、それともありのままの世界を受け止めるべきなのか

これはかなり深い問題だと思います。

余談ですが「解釈すべき」と考えるのがキリスト教、「受け止めるべき」と考えるのがニーチェなんでしょうね。

現実に生きていく私たちにできることは、月並みだけど「ケースバイケース」、時には世界を解釈し、時には世界そのものを受け止めるしかないのでしょう。

ですが、現代社会では世界を解釈する方に重心が傾きすぎているのではないか…それは、確かに実は存在している「闇の奥(=ありのままの世界)」と、どう折り合いをつけていくのか…。

今後、ますます一寸の余地もなく文明化していくであろう世界は、もしかしたらこのような問題にぶつかるかもしれません。

まとめ

以上、面白くなかったけど面白かった「闇の奥」の感想でした。

誰にでもおすすめしたい本というわけではありませんが、私は

人生の中でこの本を読む機会があって良かった!

と、思っています!

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