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「西の魔女が死んだ」読書感想文!魔女とは?そして魔女修行とは?

本の感想
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梨木果歩さんの名作「西の魔女が死んだ」を読みました。

さっそく読書感想文を書いてみます!

「西の魔女が死んだ」はどんな本?対象年齢は?

「西の魔女が死んだ」は、人気女性作家・梨木果歩さんのデビュー作です。

1994年に刊行され、現在では中高生の読書感想文の定番本となっていて、夏の新潮文庫100冊には毎年選ばれています。

ぽこ
ぽこ

「夏の庭」「博士の愛した数式」などと並ぶ、新潮文庫の夏休みの定番としての古典本という感じですね。

児童文学の賞をいくつか受賞していて、小学生でも高学年で読書好きなら読めるような、やさしい文体で書かれています。

ですが、大人が読んでもじゅうぶんに楽しめる物語で、逆に大人だからこそ感じる深みもある…そんな感じを受けました。

「西の魔女が死んだ」のあらすじ・テーマは?

「西の魔女が死んだ」のあらすじを簡単にまとめてみます。

あらすじ

中学校に行きたくなくなった主人公「まい」は、一人暮らしのおばあちゃんの家に身を寄せます。英国人であるおばあちゃんとカントリー風の生活を送りながら、「まい」は生きていくこと・死ぬということについて深く考え…物語のラストには驚きと感動が待っています。

ぽこ
ぽこ

ネタバレなしで書くならザっとこんな感じかな?

読書感想文の定番本ということで、読む前には「ちょっと押しつけがましい感動本だったらどうしよう?」と不安がありましたが、全然そのような雰囲気はありませんでした。

おばあちゃんの生活や考え方が全肯定されているわけではありませんし、安易に感動させるようなエピソードもありません。

静かでかわいらしい、プチ哲学的な物語…そんな感じです。

物語のテーマは「生きることと死ぬこと」…これに尽きるのかな、と思います。

十分に生きるために死ぬ練習をしている

「西の魔女が死んだ」の中にはこのような一節があります。

物語に「死ぬ練習」について明確に書かれた箇所はないのですが、この意味をちらっとでも考えることが、この物語のテーマの一つなのかな…と感じます。

「魔女」とは何なのか?

ここからは「西の魔女が死んだ」のネタバレを含む感想になりますのでご注意ください!

「西の魔女が死んだ」の主人公まいは、中学でクラスの女子から無視されるといういじめを受け、学校に行かなくなります。

まいのお母さんは、登校拒否になったまいを、田舎で一人暮らしをするおばあちゃんに預けます。

お母さんは、まいが日常の生活に戻れるまで、田舎暮らしで精神的休養を取らせるつもりだったのでしょう。

まい自身も、心のどこかで「いつか学校には戻らなけらばならない」と思っている描写があります。

そんなまいに、おばあちゃんは「それなら(=学校に戻るなら)、まいには魔女修行が必要ですね」と言います。

まず、物語の中で「魔女」はどんな存在だとされているか、おばあちゃんのセリフをまとめると…

「自分で決める」という意志の力を持ち、外からの刺激…自分の感情も含めて…に振り回されず、その時に見るべきものを見て、聴くべきものを聴き、世界を正しく受け止める。

…こんな感じですね。

面白いと感じたのは、「自分の感情」も「外からの刺激」だということです。

まいは近所のおじさん「ゲンジさん」が好きになれず、彼の行動を邪推するのですが、おばあちゃんは、直観は大事だけど、それに取りつかれて妄想してしまってはならないといいます。

ぽこ
ぽこ

これ、私には身に染みる言葉ですね…。

私も他者の言動を自分の頭の中で解釈し、それが正しいと証明されないうちから、事実だと思い込んでしまう傾向があります。

自分の心の中にある感情や妄想も「外からの刺激」で、自分自身を損なっていくことがある…本当にその通りだなあと。

魔女になるための修行とは?

植物

さて。

魔女とは、外からの刺激に動じない強い芯を持つことで世界を正しく把握する存在。

ぽこ
ぽこ

本当に魔法が使えるというよりは、人生を明るく楽しく強く生きていくための秘訣(≒魔法)を知っている…そんな存在ですね。

では、魔女になるためにはどのような修行を積まなければならないのか。

おばあちゃんがまいに示した修行は…毎朝毎晩同じ時間に起床・就寝する頭と体の両方を毎日しっかり動かす…そのために自分が決めたルールはコツコツ守る…。

一見、非常につまらない内容です。

ですが、おばあちゃんはこのような地道な努力の連続は、意志が強くないとできないし、毎日続けていくと、ある日パッと成長している自分に気づく…といった趣旨のことを話します。

おばあちゃんいわく、「魂は(本質的に)成長したがっている」らしいので、こういったことが魂や精神を鍛える一番の方法なのでしょうね。

しかし…私にはこの魔女修行、無理だなあ…。

魔女修行が無理な人はどうすればいいかというと、実はおばあちゃん自身も、魔女修行を必要としないといいます。

なぜかというと、おばあちゃんは田舎で自然と一体となった暮らしをしています。

悪魔のささやき(=外からの刺激)がほとんどない生活に満足しているため、魔女になる必要がないのです。

このことから考えると、私たちは刺激的な都会的生活で自分自身を損なわないように、魔女になる必要があるのかもしれませんね。

自然との生活を選べば魔女になる必要はありませんが、まいがおばあちゃんとの生活を選ばなかったように、私たち人間は「ポリス的生き物」=人間の中で生きたいと思う部分があるのでしょう。

都会的な暮らしは魅力的だけど、刺激的すぎて自分の魂が損なわれることもある…そうならないように強い自分自身を持ちなさい…これが、おばあちゃんが伝えたかったメッセージなのかなあ。

最後の魔法について

花

さて最後に、物語のラストを彩るおばあちゃんの魔法…ガラスに書かれたメモについて触れておきます。

私がこの物語を中高生の頃に読んだら、これはおばあちゃんの魔法だと考えたでしょうが、大人の私はどう考えたかというと…

ぽこ
ぽこ

これ、生前のおばあちゃんに頼まれてゲンジさんが書いたんだな。

…と、直感しました。

魔法も奇跡もない大人の感想ですね!

真相のほどはわかりませんし、どのように捉えてもいい場面だろうなと思いますが、これを魔法だと捉えない自分について、「あー私は特に成長もしていないけど、やっぱり大人になったんだなあ」と思いました。

ユーミンの「やさしさに包まれたなら」という歌も、大人には魔法や奇跡が見えにくいと歌いますね。

ですが私は、魔法や奇跡が見えなくなることは淋しいことではなく、世界をそのまま受け止める強さが身についたのではないか…と思っています。

まとめ

「西の魔女が死んだ」の感想・レビューでした!

読書感想文の課題本として定番ですが、小学高学年~高校生くらいの女の子には特におすすめです。

男の子は、男子の友情が描かれる「夏の庭」の方が共感して読めるかもしれません。

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