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中島みゆき「ローリング」歌詞の意味を考察・解釈!孤独な世界で笑って生きる

中島みゆき
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中島みゆきさんの名曲「ローリング」の歌詞を、自分なりに考えてみました!

「ローリング」ってどんな歌?

「ローリング」は、中島みゆきさんが1988年に発表したオリジナルアルバム「中島みゆき」の一番最後に収録されている楽曲です。

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ゆったりとした長調(メジャー)のバラードですが、歌詞や曲のやさしさ、せつなさ、深みなどは、まさに中島みゆきさんの真骨頂。

一般的にはあまり知られていないかもしれませんが、ファンには非常に人気のある楽曲で、「名曲」と言い切ってしまえる気がします。

1993年発売の「時代-Time goes around-」にも別バージョンが収録されています。

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こちらは力強いアレンジ・歌い方が特徴ですが、私は淡々と歌い上げるアルバム「中島みゆき」バージョンの方が好きです。

「ローリング」の歌詞は心にしみいる表現がたくさんある一方で、やや難解なフレーズもあります。

私のような不惑の年を過ぎたのに人生のヒヨッコ…みたいな人間には、まだ感じ取れない部分もあると思いますが、力の限り考えてみます!

「ローリング」に歌われているテーマは何か?

「ローリング」の歌詞全体はUta-Netでご覧ください

まず最初に「ローリング」で歌われているテーマを、ざっくりと特定しておきます。

サビに「Rollin’age」とありタイトルが「ローリング」ですから、この歌が「ローリングエイジ」と中島みゆきさんが呼んでいる世代を歌った…という可能性が極めて高いでしょう。

ちなみにRollin’ageのもとの形はRolling ageですが、ingで終わる英単語は、最後の「g」を発音しない時に「’」を使って省略されることがあります。中島みゆきさんは「ローリンネイジ」という風に歌っているので、オシャレに省略したのでしょう。

あとから詳しく考察しますが、「ローリングエイジ」とは中島みゆきさんが含まれる、学生運動に乗り遅れた1950年前半~中盤生まれの方々かな、と。

「ローリング」が発表された1988年には、この世代の方々は30代中盤~後半。

現代の感覚だと30代はまだまだ若者という感じがしますが、今ほどは平均寿命が長くなく結婚年齢も若かった1988年頃は、若者は20代まで、30代以降は中年というイメージだったのではないでしょうか。

「ローリング」はこの世代を歌った歌という前提で、歌詞を考えていきます。

サビの部分は1~3番とも共通なので最後に解釈するとして、1~3番のAメロを順番に考えていきます。

1番の歌詞の解釈…若い世代と共感できない

ローリング1番のAメロの歌詞はこうなっています。

工事ランプの凍る路地をたどって

探しあぐねた たむろできる場所を

昨夜騒いだ店は 客を忘れて

一見相手の洒落た挨拶を配る

「ローリングエイジ」である主人公は、居心地のよい「たむろできる場所」…ちょっとした飲み屋を探していますが、「探しあぐねた」とあるように、なかなか見つけられずにいます。

昨晩あるお店に入って、楽しく騒いで過ごしたが、常連客がいるような昔懐かしいお店ではなく、おそらく清潔でオシャレな大型店、もしかしたらチェーン店。

まずまず気に入ったので次の日も行ってみたけれど、従業員も客もたくさんいるため、スタッフは主人公が昨日も来た客であることがわからない。

従業員も客もお互いに「一見さん」で、マニュアル通りの「いらっしゃいませ、何名様ですか?」という挨拶を投げかけてくるのが淋しい…こんなところでしょうか。

私の両親やおじ・おばたちは「ローリングエイジ」に当てはまる世代なのですが、親戚で集まった時に、「最近の接客業(主にコンビニ)は型通りで心がこもっていない」という話をしていたことがあります。

それに対し反撃したのは、私たち子ども世代(1970~1980年代生まれ)。

「ワガママな客がクレームをつけてくるからマニュアルは生まれるんだよ。そもそも買い物程度でコミュニケーションを図ろうとするのが気持ち悪い。レジはお金を払って商品を受け取る場で、終わったらすぐ次の人に譲るべきでしょ?」

店員さんは仕事中なのであり、個人的な会話で邪魔するべきでない。そもそもお互いに知り合いになりたくもない。

ぽこ
ぽこ

今でもレジに並んでいる時にシニア客が会計が終わっても店員さんに話しかけているのを見て(店員さんは列の後ろを気にしている)、イラっとすることがありますね…。

コンビニでなくて飲食店であっても、スタッフに顔を覚えてほしいなんて思わない。たとえ覚えていても、知らないフリして一見さんを装ってそっとしておいてほしい。

私たちの世代以下の人々は、個人差はあっても私のような考えの方が多いのではないでしょうか。

現在は「ローリング」が発売された頃よりも、「ローリングエイジ」よりも若い世代がさらに増えてきました。

「ローリングエイジ」の方々は自分たちより若い世代のこのような感覚に共感できず、淋しい思いをしたり、怒りあまってクレームしたり(「常連客を覚えろよ!」みたいな)しているのかなあ…。

要するに「ローリング」の1番は、「ローリングエイジ」と若い世代との価値観・共感の断絶を歌っていると解釈します。

2番の歌詞の解釈…年上世代とも共感できない

若い世代に共感してもらえない「ローリングエイジ」の人々は、今度は自分たちより上の世代との共感を求めてみようとします。

それが2番の歌詞なのかなと思います。

黒白フィルムは 燃えるスクラムの街

足並み揃えた幻たちの場面

それを宝にするには あまりに遅く生まれて

夢のなれの果てが転ぶのばかりが見えた

「黒白フィルム」=モノクローム写真・映像は、カラーテレビなどが普及する前の古い時代の象徴です。

そこに映っている「燃えるスクラムの街」「足並み揃えた幻たちの場面」は、「ローリングエイジ」より少し上の世代が繰り広げた学生運動を指していると思われます。

学生運動は全体としては頓挫していますから、「幻たちの場面」という表現はどこか切ないですね。

「それを宝にするには」…この学生運動の世代と思い出や価値観を共有するには、「ローリングエイジ」は生まれるのが遅すぎた、と。

「ローリングエイジ」が大学生になるのは1970年頃ですが、その前に学生運動は下火になり、過激派による世間を震撼させるような事件もあり、学生運動の時代は終わりました。

「ローリングエイジ」は小さい時に大学生たちがエネルギッシュに運動していたのを見ていたでしょうが、いざ自分たちが大学生になると、下火になり過激化した学生運動(=夢のなれの果て)が頓挫(=転ぶ)し、学生運動の「夢」の中には入れなかった。

つまり「ローリングエイジ」は年上世代とも価値観・共感の断絶がある。2番で歌われているテーマはこれかな、と思います。

3番の歌詞の解釈…究極の孤独と1つの救い

年下世代と年上世代、どちらの共感の輪にも入れない「孤独の世代」である「ローリングエイジ」。

そうすると同世代の仲間にシンパシーを求めることになりますが、そこでの人間関係作りに失敗すると、さらなる孤独を生きることになります。

3番の歌詞はこうなっています。

9桁の数字を 組み替えて並べ直す

淋しさの数と同じ イタズラ電話

ボックスを叩く 街の風が冷たい

どうしても1つだけ 押せない組がある

携帯電話・スマホが普及した今は、ナンバーディスプレイがあったり、非通知設定の電話には出ないこともできるので、個人宛てのイタズラ電話はそれほど多くないです。

ですが「ローリング」が発売された1988年頃は、電話はほとんどナンバーティスプレイのない固定電話だったので、イタズラ電話は社会問題の1つでもありました。

ぽこ
ぽこ

私はまだ子どもでしたが、家の固定電話にイタズラ電話がかかってくることは時々あったなあ…。

「ローリング」の歌詞にあるように、数字をランダムに組み合わせてかけるイタズラ電話の目的は…「淋しさの数と同じ」…孤独を紛らわせるための、要するに「かまってちゃん」的なものでしょう。

もちろんイタズラ電話は社会迷惑で許されない行為ですが、イタズラ電話をかけないと話す人がいないほど孤独で淋しい…最近言われるようになった「孤独問題」のひとつでもあるのかもしれません。

歌の中で、イタズラ電話は電話ボックスからかけているようですが、「ボックスを叩く町の風が冷たい」…孤独な「かまってちゃん」は、どうしてもちょっかいをかける相手から嫌悪されてしまいます。

孤独な人間はその孤独さゆえの行動でさらに社会から疎まれてしまう…この悪循環をどうすればよいんでしょうね…。

3番にひとつ救いがあるのは、「どうしても1つだけ押せない組がある」という歌詞かなと思います。

歌い手にはどうしてもかけられない電話番号を持った「特別な人」がいるのです。

この「特別な人」に電話をかけられない事情があるのはせつないですが、「ローリング」の歌詞の中で、唯一孤独と反対のベクトルを少しだけでも含んでいるのは、このフレーズだと感じます。

ローリングエイジとは?そしてその生き方は?

さてここまで読み解くと、「ローリングエイジ」の姿が見えてきました。

「ローリングエイジ」とは

「ローリングエイジ」とは1950年代前半~中盤くらい生まれの世代。中島みゆきさんも含まれる。都市化した年下の世代とも、学生運動に身をおいた年上の世代とも、価値観や思い出を共有できず、世代として孤独感を感じている。

なぜ「ローリング」なのかというと、「転がる石には苔が生えない」=「A rolling stone gathers no moss」の「rolling」から取っているのかなと思います。

この世代は年下世代とも年上世代とも共感できず、落ち着いて身を置ける居場所がない「転がる石」なのかな、と。

「ローリングエイジは孤独」というのが、「ローリング」の歌詞からはひしひしと伝わってきます。

しかし孤独で淋しいからって、ランダムにイタズラ電話をかけたりして周囲の人々に淋しさをぶつけることを、「ローリング」という歌は「仕方ないよね」とは言いません。

サビはせつなくもカッコイイのです。

Rollin’ age 淋しさを

Rollin’ age 他人に言うな

軽く軽く傷ついてゆけ

Rollin’ age 笑いながら

Rollin’ age 荒野にいる

僕は僕は 荒野にいる

「孤独で淋しい」なんてことを、他者にぶつけてはいけない。

この淋しさは、誰か個人が悪いわけでもない仕方のない運命なのだから、軽く、笑いながら、傷ついて行け…と。

淋しい時こそ、その淋しさを「軽く笑え」という呼びかけ。

そして「荒野」は孤独な世界のことでしょう。孤独な人生を笑って受けとめる。

淋しいからといって年下世代に迷惑をかけたり、自分より弱い存在に当たり散らしたりせずに、「ローリングエイジ」として、明るく軽やかに孤独な生を生き抜く…うーん、難しいことですけどカッコイイですね。

このメッセージは「ローリングエイジ」でなくても、いつか年をとって時代に取り残されていくであろうすべての人々へ向けられているとも考えられます。

私も今は「ローリングエイジ」を時代遅れだという目で見ているけど、自分がシニアになって世界の価値観が激変したら、今度は自分が孤立した世代になるかもしれない。

そんな時でも新しい世代に淋しさをぶつけたりせず、激変した世界を自分なりに楽しく生きる…そうできるといいなあ!未来の私、覚えていてほしいです!

まとめ

中島みゆきさんの「ローリング」の歌詞について、いろいろ考えてみました。

やっぱり…名曲ですね!

ちなみに歌詞に出てくる「荒野」は、桐野夏生さんが2012年に出した「だから荒野」という小説の「荒野」とイメージが近いかなと思います。

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「だから荒野」の「荒野」は、世代の孤独さというよりは、孤独を生きることを覚悟した人間の精神性も含めた言葉という感じではありますが、「ローリング」に出てくる「荒野」が孤独と関連が深いということに気づいたのは、この小説のおかげです。

「ローリング」は2つのバージョンがありますが、アルバム「中島みゆき」のバージョンが個人的にはおすすめです!

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