昨年、海外旅行がキャンセルになって、ヤケクソで京都旅行に行って以来…
奈良に行きたいよう!
…となった私は、奈良旅行は全然現実味を帯びていないのですが、古代史の本をちょこちょこ読み始めました。
前回読んだ本はこちら。
2冊目として、岩波新書の「古代国家はいつ成立したか」を読んでみました。
そのレビュー・感想文です!
「古代国家はいつ成立したか」はどんな本?
「古代国家はいつ成立したか」は、考古学が専門の都出比呂志さんが書いた本で、岩波新書というレーベルから出ています。
タイトルからは世界史ものか日本史ものかわかりませんが、日本の古代史について書いた本です。
2013年に第1回古代歴史文化賞・大賞を受賞して話題になり、本屋さんでも長く平積みされていました。
タイトルの通り、日本古代史において「国家」と呼べるほど国が成熟したのはいつごろなのか?をテーマに書いています。
古代における国の成熟度を探る本ですが、弥生時代から古墳時代を経て、藤原京くらいまで、710年の平城遷都にいたるまでの時代の通史として読むことができます。
律令国家成立前夜を扱っている感じですね。
内容の難しさはどのくらい?
「古代国家はいつ成立したか」は岩波新書から出ていますが、どのくらい難しい内容か?ということが気になりますね。
岩波新書は一般向けといっても内容が難しいことが多いんだよな…。
内容の難しさですが、「ですます調」で書かれていることや、著者さんの文章力のおかげか、文章自体は読みやすくわかりやすいです。
難解な言い回しはほとんど使われず、専門用語乱発という感じもないです。
高校日本史を専攻していなくても、ひとつひとつ説明がていねいなため、挫折せずに読めるのではないかと思います。
ただ文章はやさしいですが、扱っているテーマは専門的です。
というのも、「古代国家はいつ成立したか?」に答えを出すためには、先に「どんなものなら古代国家と呼べるのか?」について結論を出さなければなりません。
この「古代国家とは?」という問いに対する答えが専門家の中でも分かれているようで…
本の中でも「古代国家とは何か?論争」を経て、「古代国家はいつできた?論争」に入るため、どうしても内容が専門的になっています。
私のような「古代ちょっと興味あり」程度の人間は、「古代国家はいつできた?」には興味があっても、「そもそも古代国家とは?」にはそれほど興味が持てず、ちょっと読み流してしまった所もありました。
そのような意味で、文章はわかりやすいけど内容は専門的という、一般向けにしてはやや内容が深すぎても、学術書としては良書といえると思います。
おもしろかった「前方後円墳体制」
「古代国家はいつ成立したか」で最も面白く読んだ内容は、古墳の形状についてです。
私は日本の弥生時代に続く時代が、「古墳時代」と呼ばれることについて、「でっかいお墓がたくさん作られた時代だからそう呼ぶ」程度にしか考えていませんでした。
しかし、古墳の形や大きさは、実は非常に大きな意味を持つのだとか。
前方後円墳についてあの形なのは「単なる時代の流行り」と思っていたのですが、他に前方後方墳を作る勢力がいて、お墓の形で勢力のグループ分けができるというのが「へえー!」という感じでした。
最終的に、前方後円墳グループが前方後方墳グループを凌駕し、日本列島の広い範囲が前方後円墳グループにより統一されたと。
現在でも「仲間意識」を示すために、何かを統一(たとえばスポーツのユニフォーム)することがありますが、日本の古代ではそれがお墓だった…という考え方ですね。
すでに死んだ祖先の持ち物がシンボルになるというのは、現代の私たちにはあまりピンとこないのですが、支配層がいる時代は、自分たちの支配の正当性を示すために、祖先の墓は重要だったのでしょうね。
で、古墳は、権力層にとってステイタスを示すものが仏教寺院に変わることで、作られなくなっていくと…。
しかし仏教が広まっても、その前の宗教的産物である前方後円墳が、(盗掘はあっても)権力側に破壊されずに残っているのは面白いなと思います。
初期の仏教は権力者に心から信仰されたというよりは、大陸と仲良くするための道具だったのではないか…という気もしてきます。
現代日本人がキリスト教を信仰していなくてもクリスマスを楽しむ精神と、少し似ていたりするのかな?
まとめ
「古代国家はいつ成立したか」を読んだ感想でした。
日本史をしっかり勉強した人でなくても、古代史に興味があれば読める本です!
ただし内容は学術的なので、古代史や考古学がディープに好きという人向けだと感じました。