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湊かなえ「豆の上で眠る」感想文!本物の姉妹って何?

本の感想
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湊かなえさんの「豆の上で眠る」を読んだので、感想文を書きます!

まずはザックリとしたあらすじ&感想を!

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「豆の上で眠る」の大きな主題は「姉妹」です。

同じ新潮文庫から出ている湊かなえの「母性」を読んだことがありますが、そちらは主題が「母娘」でした。

湊かなえさんの作品はこれまで5作品読んだことがありますが、

女性同士の微妙な人間関係を描くのがとても上手だなあ…

と感じます。

「豆の上で眠る」の簡単なあらすじは、

小学生のときに誘拐されたお姉さんが2年後に発見されて戻ってくるが、主人公である妹は、戻ってきた姉を見て、本人ではないのでは?という微妙な違和感を感じる…

…こんな感じです。

主人公とお姉さんは、よく湊かなえ作品に出てくるような、女の業を煮詰めたようなタイプではなく、「豆の上で眠る」には「母性」で感じたような「イヤ~なねっとり感」はありません。

また、湊かなえの作品は、「章を分ける形で複数の人物が語り手になり、誰の立場から見るかによって物語の解釈が変わってしまう」という手法が多いのですが、「豆の上で眠る」では、一貫して主人公である「妹」からの視点で描かれます。

そのためか、これまで読んだ作品と違い、主人公の心情の機微が結構伝わってきて、読んでいるこっちがつらくなる場面がありました。

このへんの描き方は、湊かなえさんの筆力に感嘆します。

で、全体としては結構面白く読んだのですが、個人的にはラストがちょっとピンとこなかったですね。

これ以上はネタバレになりますので、ネタバレOKの方だけ、この先の記事をお読みくださいませ。

真実は面白かったけど凝りすぎたのでは?という印象

この先は「豆の上で眠る」のネタバレを含みますのでご注意ください!

鍵

私は

主人公がお姉さんがいない間に心が病んで、考えすぎているだけで、帰ってきたお姉さんは本物なんじゃないかな?

と思って読んでいました。

それだけに、実は入れ替わってたという種明かしは衝撃的でした。

幼いころに一緒に育った万佑子ちゃんとは血のつながりがなくて、帰ってきた別人の女の子が、実は血のつながった姉だったというオチですね。

私が「お姉さんは本物では?」と思った根拠の一つが、両親が別人疑惑を持っていなかったことなのですが、実は両親はこの入れ替わり作戦に了承していたため、主人公や祖母が抱く別人疑惑をむしろ消そうとしていたという…。

「あ!そうだったのか!」といくつも腑に落ちていく感じは、非常によくできています。

ただ、物語の最後の最後に、バーッと真実が語られるのですが、ちょっと細部まで凝りすぎていて、逆にリアリティがなくなってしまったかなあと感じました。

広恵さんのお姉さんまで登場させる必要はなかったような気がしますし、小学生の女の子二人までもが作戦に協力していて、警察に対しても演技をやり通していたってのがなあ…。

物語の種明かしの大枠は面白いと感じたのですが、細部をこまごまと書いてしまったせいで、逆にピンとこない物語になってしまったかなあと思いました。

種明かしは大枠だけにして、細かい部分は読者に想像させる形の方が面白かったんじゃないかなあ…。

猫探しをさせる主人公の母の描き方がリアル…

白猫

さて、この本の中で私が夢中に読んでしまったのは、主人公が猫さがしの名目で、近所の家にお姉さんが隠されていないか探し回り、地域の子どもたちから疎まれてしまう部分ですね…。

これは主人公の母親が、主人公に押し付けたことです。

主人公の母親は、裕福な家庭で育った常識人で、世間体を気にする上品な女性です。

この主人公の母親は、自分がなりふり構わず娘探しをしたいのだが、世間体を考えるとそれはできない。

そこで、手元に残っている娘(=主人公)と、猫を利用することを思いついたわけですね。子どもが猫を探している体裁を取ればよいだろうと。

猫を浴室に閉じ込め、猫がいなくなったから探しておいでと主人公に言い、自分が探したい家を一軒一軒回らせます。

地域の人たちは主人公が猫さがしでなく、近所を疑ってお姉さん探しをしていることにうすうす気づき、主人公は地域からも学校からも孤立していきます。

この母親の妹…主人公から見ると叔母に当たる冬実さんは、主人公の母をこう評します。

母と同じ歳の人たちは、自分が常に世の中や時代の中心にいると無意識に錯覚している世代

自分が正しいと思うことが世の中の常識である。多様な価値観が共存することを認めない。

―まあ、仕方ないよ。一番わがまま放題したい時期に、親や社会がそれを許せるくらいのゆとりを十分に持ち合わせていたんだから。

いますよね、こういう女性…。

自分が中心だという観点で世界を見ているので、自分の身の回りの存在を(無意識にかもしれないけど)道具のように扱うんですよね。

恵まれた環境で育ってきたため、ずっと道具でいてくれる人がいるから、その生き方が定着してしまうと。

で、自分は正しいと思い込んでいるため、それが相手を損なっていることに思い当たらない…。

この物語に出てくるお母さんの救いは、主人公に対して「猫探しではなくお姉さん探し」であることを認めていることかなあ。

こういうタイプの女性って、本当の後ろめたい目的は絶対に認めないことが多いですよね。

私自身はこういうタイプの女性に操られる性格ではないのですが、振り回される人を見たことはあるので、この描写は本当に腹が立ちましたね~。

湊かなえさんは、こういう「品があってちょっとズルい所がある女性」を描かせると天下一品ですね。

血と心のつながりはどちらが大事?

指輪

さて、この物語の大きなテーマの一つが、「血のつながり」と「心のつながり」でしょう。

主人公の両親が「入れ替わり」を承諾したのは、はっきりとは描かれませんが、手元に残る女の子が自分たちと血がつながった子だからでしょう。

また、主人公の元から去った、元・万佑子ちゃんが連れ去られた家に残ったのも、連れ去った女性が実の母親だからなのでしょう。

しかし、主人公はそれに納得がいきません。

血がつながっていないとはいえ、失踪した後に本気で心配していた両親の気持ちや、幼いころの自分との思い出はどうでもいいのか、と…。

この物語を締める一文はこうです。

本ものって、何ですか―――。

血のつながりの方を重視する両親や姉(たち)と、それに憤る主人公。

いったいどちらに共感できるか…と、自分の価値観が試されるテーマだなと思いました。

まとめ

「豆の上に眠る」の感想でした。

ちょっと種明かし部分が好みでなかったかなというのはありますが、全体としては夢中になって一気読みしてしまう面白さがある本でした。

本を閉じるときに、最後の主人公の問いかけに、自分ならどう答えるか、考えさせられました。

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