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中公新書「倫理学入門」の感想!大学時代に欲しかった本!

本の感想
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中公新書「倫理学入門」を読んだので、その感想文です!

「倫理学入門」を読んだ理由は?

ワタクシ大学では思想系の学部に属していまして、専攻は倫理学でした。

高校の授業では倫理が一番好きで、大学では哲学を専攻しようと思っていました。

ですが、大学で哲学系の授業をいくつか受けて、

ぽこ
ぽこ

私が学びたいのは哲学の中でも倫理に関する部分かも…。

…という気持ちが沸いてきました。

たとえばカントの「実践理性批判」は非常に面白く読んだのですが、それに比べると「純粋理性批判」は面白くはあるのですが、深く追求したいとまでは思わなかったのですね。

私のつたない理解でぶっちゃけて言うと、「実践理性批判」は人間の生き方に関する思想(=倫理)、「純粋理性批判」は人間がどうやって世界を認識するかについての思想(=認識論哲学)です。

そんなわけで細かい専攻を選択する際に、哲学でなく倫理学を専攻しました。

ですが、倫理学の講義は個別の古典的哲学者の思想を学ぶものがほとんどで、倫理学全体を見渡すような授業がありませんでした。

ぽこ
ぽこ

大学生はそういうことは自分で学習しなきゃだな!

…と思った(我ながらエライ!)私は、「ソクラテスの弁明」から時代順に哲学・倫理学の古典を読み進めてみましたが…私の読書ペースが遅いこともあり、大学4年間はデカルトに到達したところで終わってしまいました!

社会人になってからは哲学書をじっくり読む生活はなかなかできず…私の中で「倫理学全体について学ぶ」ということは、人生の宿題となってしまっていました。

大学を卒業して15年以上が経って…ようやく書店で見つけたのが中公新書の「倫理学入門」。

待ち望んでいたタイトルの本だったので、さっそく読んでみました!

「倫理学入門」はどんな内容?

中公新書はカッコいいサブタイトルがついていることが多いですが、「倫理学入門」のサブタイトルは「アリストテレスから生殖技術、AIまで」となっています。

中公新書のサブタイトルとしてはシンプルですね。

で、このサブタイトルに込められた意味は、倫理学的には結構大きくて、著者さんもあとがきでちょっと触れていましたが、ざっくりと…

  • アリストテレス=基礎倫理学(古典文献研究)
  • 生殖技術、AI=応用倫理学(実際の倫理的問題の考察)

こんな感じに当てはまります。

サブタイトルで「この本では基礎倫理学から応用倫理学まで学べるよ!」と言っているわけですね。

ぽこ
ぽこ

まさに私が大学時代に読みたかった本!

本の構成は基礎倫理学と応用倫理学にキレイに分かれているわけではありませんが、それぞれ扱っている内容はだいたいこんな感じです。

基礎倫理学
  • 社会契約論(ホッブズ、ロック、ルソーなど)
  • カントの義務倫理学
  • 功利主義(ベンタム、ミル)
  • ヒュームの共感理論
  • アリストテレスの徳倫理学
応用倫理学
  • 市場・国家・戦争に関する倫理学
  • 生命倫理学(安楽死やクローンの問題など)
  • 環境倫理学(環境破壊はなぜ悪か?など)
  • AIに関する倫理

倫理学という学問は広く、すべてを扱えているわけではないでしょうが、「倫理学をザックリと全体的に学びたい!」=「倫理学に入門したい!」という読者にとっては、理想的な内容じゃないかと思います。

特に基礎倫理学の部分は倫理(よい/悪い)に関する古典思想だけを取り上げていて、非常に頭に入りやすいと感じました。

「倫理学入門」は内容が難しい?

さて中公新書というレーベルは、一般の読者向けの入門書でありながら、やや内容が難しいことがあります。

「倫理学入門」の難易度はどうか…と言いますと、内容はもちろん難しいのですが、文章が難解というわけではありません

新書のような本を何冊か読んだことがあるという方なら、それほどストレスなく読めるのではないかと思います。

また、基礎倫理学を学ぶ箇所では、哲学者や思想家の肖像画や写真が紹介されていて、こういったところが地味にウレシイです。

ぽこ
ぽこ

思想家の顔を見ると、何だかその人の思想を親しみやすく感じるんですよね。

また、この本は「そもそも倫理って何?」という話から始まっていて、基礎倫理学の前段階である「ゼロから始める倫理学」みたいな内容もあり、倫理学を学んだことがない方でもじゅうぶん読める構成になっています。

倫理学自体が難しさのある学問なので、難しいと感じる箇所はありますが、そこを何とか理解できるように考えるのが、また倫理学なのだろうなと思いながら読みました。

まとめ

中公新書「倫理学入門」を読んだ感想でした。

本の中身については深く触れずに、内容や難易度を紹介した記事になってしまいましたが、やはり倫理学は深い学問で、内容に踏み込んだ感想を書くと長くなってしまいそうなので、とりあえずサラッとした記事にしてしまいました。

本書で紹介された倫理に関する思想は、共感できるものもあれば、自分の考えとは違うかな?というものもありました。

誰もが同じ意見を持つような話なら、倫理的な議論は不要なので、多様な考え方があるのは当然のことですね。

作者さんは、人間が「倫理的なよさ」について考えるのはなぜか?について最後に考察していて、その答えのひとつとして「他者の存在」を挙げていました。

その作者さんの論拠について軽く説明するのは難しいので本書を読んで頂ければと思いますが、(個人の)倫理的判断が普遍的妥当性を要求する一方で、倫理の根底には他者が存在するという観点は、非常に興味深かったです。

ぽこ
ぽこ

倫理は自分の正しさを主張する一方で、出発点には尊重すべき他者がいる…そこにいろいろな可能性があるのかもしれないなあ…。

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