中野京子さんの本を、「ハプスブルク」「怖い絵」と読んで、非常に面白かったので…
「怖い絵」の2巻目にあたる「怖い絵 泣く女篇」を読んでみました!
さっそく感想を!
1作目よりさらに面白かった「怖い絵 泣く女篇」
ヒットした本の2作目や続編というのは、「あまり面白くない」というイメージがあります。
1作目は「書きたいことがあるから書いた」のでしょうが、ヒット作の続きは「売れたから書いた」のか、1作目ほどのエネルギーが感じられないことが多いんすよね。
「怖い絵」も、「扱いたかった絵の多くは1作目で語られているだろうから、1作目ほどは面白くないかもなあ…」と思いながら読んだのですが…
めっちゃ面白かったです!!!むしろ1作目より面白かった!
うーん、この作品がシリーズ化されている理由がよくわかりました。「怖い絵」というテーマで語る絵のネタが尽きないなんて、中野京子さんスゴイです。
ただ、「泣く女篇」というサブタイトルは、単に取り上げている絵のタイトルのひとつが「泣く女」というだけで、本全体で「泣いている女性の絵」を取り上げているわけではないので気を付けてくださいませ。
私は、女性の涙を描いた絵を何作も取り上げているのかと勘違いしちゃいました。
フェルメールの贋作事件が面白い!
さて、この「泣く女篇」で一番面白かったのは、フェルメールの贋作を描いたメーヘレンの話ですね。
フェルメールの真筆だと世間をだまし続けてきたメーヘレン作の「エマオの晩餐」ですが、写真を見る限り、なぜこれがフェルメール作だと、専門家に至るまでだまされたのかわかりません。
メーヘレン作の「エマオの晩餐」の写真は、一目で「あーカラヴァッジョの『エマオの晩餐』を真似しているな」と思いました。
ですが、フェルメールの作品には全く見えません。それどころかフェルメールを真似して描いたようにも見えません。
写真で見ているせいかもしれませんが、少なくともフェルメールの代表作とは、色合いとか人物表情とかが違い、
フェルメールの贋作を作るならもっと似せればいいのに…
とまで思います。
しかしメーヘレンが、17世紀の作品だと思われるように施したテクニックにだまされたのか、当時(20世紀初頭)の専門家が「フェルメールの真筆」と鑑定したため、「エマオの晩餐」はフェルメール作として脚光を浴びます。
第二次世界大戦後に、メーヘレンはナチスに他の「フェルメール作品(本当は偽物)」を売ったことで逮捕されます。
で、メーヘレンはこのままだと国宝を敵に売り渡した国賊として重罪に帰せられるため、「あれは自分が描いた偽物。他にもたくさん贋作を描いた」と告白せざるを得なくなり、「エマオの晩餐」も贋作だと判明したわけですが…
メーヘレンの贋作が醸し出す2つの怖さ
怖いですよね。
ナチスが絡んだ偶然がなければ、現在でも「エマオの晩餐」はフェルメール作だとされていたかもしれません。
こんな話を読むと、他にも作者が偽られている名画はあって、真実を知る者が全てこの世を去り、永遠に作者を間違われたままになるのかも…と思ってしまいます。コワイ。
また、「この絵はとてもフェルメール作には見えない」なんて言った私も、この絵が贋作であることが明かされていなくて、専門家のお墨付きで「フェルメールの真作」と言われれば、
人物の表情とか色合いはイマイチだけど、どこか神秘的な雰囲気がさすがフェルメールだなあ。
とか、必死でこの絵の良さを探そうとするのかもしれません。
絵ではなく作者を見ている、この姿勢も何だかコワイです。
絵を鑑賞するときは、作者の名前を伏せた状態で鑑賞しないと、「その絵そのもの」を楽しむことはできないのかもしれないですね。
まとめ
そんなわけで、2作目も抜群に面白かった「怖い絵」でした。
これだけ面白いと、3作目以降も手に取ってしまいそうです!