何か野球小説を読みたいな~
と思って、手に取ってみたのが、「6(シックス)」
昨年、映画化もされた「イノセント・デイズ」を書いた早見和真さんが、東京六大学野球をテーマに描いた小説です。
同じ早見さんの野球小説だと、高校野球が舞台の「ひゃくはち」もあります。
本当はこちらが読みたかったのですが、棚になかったため、「6 シックス」を読むことにしました。
その感想文です!
まず「6 シックス」のあらすじをざっくりと…
「6 シックス」は、東京六大学野球を舞台にして、それぞれの大学をテーマにした短編6編で構成されています。
それぞれの短編はつながっていて、最後まで読むと、東京六大学野球の秋季リーグが、開幕戦から最終節まで進んでいきます。
斎藤佑樹が半分くらいモデルなのかな?という感じの、早稲田大学の元甲子園スター投手を軸に、話が展開されていきます。
野球小説というよりは東京六大学小説という感じ
私は、「野球小説を読みたいな~」という気持ちで手に取ったのですが、小説の内容は、あまり野球に寄ったものではありませんでした。
野球の試合がメインでなかったことが少し残念ではありましたが、登場人物にリアル感があり、最後までおもしろく読めました。
3時間くらいで一気読みしちゃいました。
でも、野球の試合がメインでなかったことが、かえって「東京六大学野球らしさ」だなあとも感じました。
高校野球ファンである私は、好きな選手が東京六大学リーグに進むと、以前は東京六大学野球を見に、神宮球場に足を運ぶことがありました。
ですが、正直に言いますが、東京六大学野球が行われている時の神宮球場の雰囲気が好きになれなくて、今は見に行かなくなりました(スポーツブルでネット中継も見れるようになったし)。
東京六大学野球の観客は、「野球好き」でなく「母校好き」の人が多いと感じるのです。
そうすると、私のような「野球好き」には、どうしても不快に感じる出来事が起こったりするんですよね。
ですが、この小説の中に、明治大学は「早明戦」を「明早戦」と呼び、慶応は「早慶戦」を「慶早戦」と呼ぶシーンが出てきたときに、何となくわかったような気がしました。
ある種の「誇り」を大事にする人たちが、東京六大学野球の周囲には多くて、それは私には理解できないことなのだろうな、と。
高校野球ファンにとっては、「PL学園対横浜」「横浜対PL学園」どっちでもいいですもんね。
東京六大学野球リーグには、「入れ替え戦がない」「早慶戦だけ必ずリーグ戦最後に特別枠で行われる」「火曜以降に順延したら東都リーグを中止にして六大学が行われる」など、「えっ!?」と思う慣習があります。
スポーツはなるべく平等な条件で行われるべきで、早慶戦の日程固定は不公平ですし、東大はどれだけ最下位のシーズンを続けても降格はないというマンネリです。
そういった、スポーツ哲学とは反するような慣習を支えているのは、伝統です。
価値観として何を大事にするのかは、人それぞれ。こういう野球の形があるのも、それが好きだという人たちがいるなら、アリなのだと思います。
リアルさが小説「6 シックス」の醍醐味!
さて、この「6 シックス」では、六大学は全て、実名で登場します。
こんなこと書いて大丈夫かなあ~…
とハラハラするくらい、リアルな描写が多く、そのリアリティが魅力でした。
あとがきを読むと、作者の早見さんは、神奈川の桐蔭学園野球部出身だそうです。
そう考えると、ある程度、周囲の知り合いから、リアルな話を聞いて書いているんだろうなあと推測されます。
また、小説の中には、読者の想像で補うしかない部分があり、
法政のマネージャー君が慕う監督さんは、このマネージャー君のことを妙に持ち上げているけど、実は早稲田のスター投手を倒すために、マネージャー君を利用したいというのが本音なんじゃないかなあ…
とか、
立教のシンデレラガールが早稲田のスター選手とつきあったり、ミス立教に選ばれたりしたのは、どうも広告代理店が仕組んだことなんじゃないかなあ…
などと想像してしまうのですが、この憶測が、最後までしっかり答え合わせできないんですよね。
「憶測がしっかりとは答え合わせできない」というのが、何ともリアル世界と同じで面白かったです。
まとめ
「6 シックス」は、野球小説としては物足りない部分もありますが、小説としては最後まで面白く読めました。「東京六大学野球」のリアルに触れてみたいという方に、おすすめです。