中島みゆきさんの楽曲「御機嫌如何」の歌詞について考えてみます。
「御機嫌如何」はどんな歌?
「御機嫌如何」は中島みゆきさんが1987年に発売したシングル曲です。
郵政省の「かもめ~る」のCMソングとしても使われたそうです。
「かもめ~る」って何!?
という若い世代の方も多いと思いますが、「かもめ~る」は2020年まで発行されていた当選くじ付きの残暑見舞いハガキです。
かくいう私も名称以外はあまり知りませんでしたが…。
しかし「御機嫌如何」が、暑中見舞いハガキのCMに使われていたとはビックリです。
歌詞の内容は、遠距離恋愛が破綻していくストーリーで、結構ドギツイ表現もありますからね…。
サビの部分だけ聴けば、明るくさわやかな歌だと思われそうなので、CMではその部分だけが切り取られた使われたのではないでしょうか。
ちなみにシングル「御機嫌如何」のカップリング曲は「シュガー」。
「シュガー」はカップリング曲とは思えないような魅力ある楽曲で、中島みゆきさんのベスト盤「BEST SELECTION II」にも収録されているほどの名曲です。
「御機嫌如何」のテーマはわかりやすくシンプル
では、ここから「御機嫌如何」の歌詞を読み解いていきます!
「御機嫌如何」に描かれている歌詞のテーマは、比較的わかりやすいです。
冒頭は…
もしも離れ離れになっても変わらないと
あれほど誓った言葉が風に融けてゆく
…つまり、遠距離恋愛がうまくいかなくなった物語です。
続く歌詞はこうなっています。
なさけないものですね あなたを忘れました
女は意外と 立ち直れるものなのでしょう
遠距離恋愛といってもお互いに冷めたわけではなく、「女は意外と立ち直れる」とあることから、女性側の方がフラれてしまったのでしょう。
「私は元気だ」という強がり
「御機嫌如何」の面白いところは、「御機嫌如何?」と問いかけておきながら、その返答などどうでもよいという感じの歌詞が続くことです。
中島みゆきさんがさわやかに歌い上げる、明るい曲調のサビの歌詞はこうなっています。
御機嫌如何ですか
私はあい変らずです
泣いてる日もあります 笑う日だってあります
…自分のことばっかり語っている!
「それであなたはどうですか?」という空気がどこにもない。
「御機嫌如何」というのは歌のタイトルでありながら、日本の手紙でよくある形式的な挨拶であって、ほとんど意味をなしていないという…。
では、歌の主人公女性が出している手紙には、何が書いてあるのかというと、「私はまあまあ元気。あなたのことなんか気にしてないよ」というメッセージのオンパレード。
人形たちのようなヒロインじゃあるまいし
嘆いていないわ うぬぼれないでほしいのよ
あなたも私を もう気づかわないでいいわ
このように畳みかける「私は元気」というメッセージは、わざとらしく響きます。
嘘であり、強がりであるからこそ、何度も言葉を変えて繰り返されるのでしょう。
それでも日常生活は続く
「御機嫌如何」で発される「私は元気」というメッセージが強がりであることは、こんなドキッとするような歌詞で示唆されています。
そうよ日々の暮らしは心とは別にゆく
泣き過ぎて血を吐いて 喉でそれでも水を飲む
ここの表現はドギツイですね~。
どんな大きな問題やストレスを心が抱えていようと、日常生活は通常通りやってくるので、普通に暮らしていかなければならない。
仕事も行かなければならないし、プライベートな問題を仕事に影響させてはいけない。
失恋で悲しくて泣きに泣いて、精神的ストレスが身体の不調まで及ぶようなとき(=血を吐いて)でも、生きていくために水を飲んだり何か食べたりしなければならず、見た目上は通常運転を続けていく。
プライベート・精神的な部分と、仕事・日常的な部分のアンバランスは、誰でも経験したことがあると思います。それゆえ共感してしまうフレーズですね。
「氷」と「涙」の組み合わせの面白さ
さて。
「あなたにフラれても私はいっこうに平気。普通に暮らしているよ」という強がりのメッセージを発している歌い手の女性は、自分のことを「氷の女」と表現します。
氷の女発の 手紙をしたためます
しかし最後に、自分が「氷の女」ではないことを表明してしまいます。
涙で濡らした切手を最後に貼ります
この最後のフレーズを最初に聴いた時には、
「氷の女」が涙を流すのって変だよな~。氷なんだから泣かないんじゃない?
…と思いましたが、この「氷」と「涙」の矛盾こそが「御機嫌如何」のテーマなのでしょうね。
どんなに強がって外見を取り繕っていても(=氷)、結局は本心(=涙)に負けてしまう。
中島みゆきさんが作る「強がっている女の歌」は、「強がりはよせよ」「孤独の肖像」「Maybe」など名曲が多いです。
「御機嫌如何」サビとAメロの歌詞のギャップ、明るいメロディーラインと重めのイントロ・後奏のギャップなども合わさって、強がり切れない女心がよく表現されているなあと思います。
まとめ
中島みゆきさんの「御機嫌如何」の歌詞について考えてみました。
歌詞全体を見ると、やっぱり「よく暑中見舞いのCMにしたな…」と思っちゃいます(笑)。
「御機嫌如何」は、その名も「中島みゆき」というアルバムの2曲目にも収録されています。
「中島みゆき」は、名曲「ローリング」が収録されているアルバムです。
「御機嫌如何」は、中島みゆきさんのシングル曲を集めた「SinglesⅡ」というアルバムでも聴けます。
こちらのアルバムは、カップリング曲の「シュガー」も収録されています。