友人の子どもたちへのおみやげに、売れている絵本をプレゼントに持って行ったら、まさかの「それ、持ってる…」でした!
そうですよねー。子ども向けの絵本は、定番絵本というものがあって、本好きの両親だと、定番絵本はそろえてしまっているんですよね~。
この経験から、プレゼント絵本は「自分が読んだことある好きな絵本だけど、ものすごく有名というわけではない」という絵本を選ぶようになりました。
私がプレゼント絵本として真っ先に選ぶのは、レオ=レオニの「ペツェッティーノ」です!
レオ=レオニ作品では地味な絵本
レオ=レオニって誰?
という方も、「スイミー」や「フレデリック」なら目にしたことがあるのではないでしょうか。
レオ=レオニは、これらの有名な絵本を描いた、オランダ生まれの絵本作家です。
「ペツェッティーノ」は、「スイミー」や「フレデリック」と同じくらい名作だと感じるのですが、動物が描かれていないので、少し見た目が地味です。
そのためか、「スイミー」「フレデリック」ほど日本では有名ではありません。
「ペツェッティーノ」の内容は哲学的
ペツェッティーノには、かわいいお魚やネズミちゃんは出てきません。
主人公「ペツェッティーノ」は、人参の角切りみたいな、オレンジ色のキューブ体です。
ペツェッティーノの仲間たちは、このキューブ体がいくつか組み合わさったカラフルな形をしていますが、ペツェッティーノだけは特別小さく、たった一つのキューブ体からできている生き物に見えます。
そこでペツェッティーノは、
僕はだれかの部分品なのでは?
と考えます。
ですが、自分自身がコナゴナになる経験をして、「僕は僕だ!」という境地にたどりつく…というお話です。
「わかりにくいもの」から自分の頭と心で考えたい!
さて、このお話、子どものころは何が何だかサッパリわかりませんでした。
でも、不思議なことに、わけがわからないのだけど、気に入って何度も読んでいました。
「あ。何となくわかった」と思ったのは、中学生くらいになった頃でした。
つまり、「ペツェッティーノ」は、子どもを熱狂させるような、わかりやすくて面白い絵本ではありません。
大人になった今でも、自分がこの絵本を深く理解できているかはわからないなあと思うくらいです。
ですが、この「わかりにくい物語」を、わからないながらも何度も読んで、ふと「あ。わかった!」と思った瞬間が訪れたときは、まさしくこの絵本の中で、主人公ペツェッティーノが、
ぼくは、ぼくなんだ!
と、大喜びで叫んだ時のような、不思議なうれしさがありました。
すぐに答えが出るわかりやすいことだけでなく、解決に時間がかかるわかりにくいことに自分の頭と心で向き合うことも、きっと人生を楽しくする…そんなことを私に教えてくれた絵本です。
まとめのようなもの
便利な道具が増えて、おそらくこれからはAIも私たちの生活を助けてくれて、私たちが「難問」と向き合う機会は少なくなっていくのかもしれません。
でもきっと、ペツェッティーノが向き合ったような問題に、AIは答えを出してくれないでしょう。
生きていく上で、誰も私に教えられないことは、自分の頭と心で考えるしかないのですが、便利な道具が増えると、私の頭はなまけることを覚えて、考える力が弱っていくかもしれないな…。
そんな弱っていく私の思考力に、深く考えるきっかけをくれる本はいくつかあると思いますが、「ペツェッティーノ」は間違いなくその1冊です。
…すごく脱線しましたが、そんなわけで「ペツェッティーノ」を持っているご家庭は少ないと思われるので、絵本をプレゼントしたい時にはおすすめです!
「ペツェッティーノ」をもらった子供さんは、それほど喜ばないかもしれませんが、私と同じように、不思議な魅力に惹きつけられて何度も読んで、ある日答えが見つかる…という素敵な経験ができるかもしれません。
海外絵本とはいえ、詩人・谷川俊太郎さんによる言葉のリズムのよい翻訳なので、読みやすいですよ~。