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「星の王子さま」感想文!共感できない私はダメな大人?

星の王子さまの感想 本の感想
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先日、読書好きの仕事の後輩が

急に読みたくなっちゃった!

と、「星の王子さま」を買っていました。

私は何年も前に、英語の勉強を兼ねて、英語版の「The Little Prince」を読んだことがあるのですが、実はあんまり心に残らない本でした。

ちなみに日本でよく知られている「星の王子さま」というタイトルは意訳です。光文社新訳文庫が「ちいさな王子」というタイトルで出版していますが、これが原作に近いタイトルです。

以前「星の王子さま」を読んで心に残らなかったのは、私の英語力が低かったせいもあるかもな。

という気持ちが昔からあったので、いいきっかけだと思い、日本語で再読してみました。

やはり「星の王子さま」は私にはダメだった…

「星の王子さま」はいろいろな出版社が文庫本で刊行していて、それぞれ訳者が違います。

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どの出版社のものを読もうか迷いましたが、海外文学に強い文庫といえば新潮文庫なので、オーソドックスに新潮文庫本を読むことにしました。

で、翻訳はスムーズな日本語で読みやすかったのですが…やっぱり、私には内容が合いませんでした。

星の王子さまは非常にファンが多い名作ですが、私の感性がひねくれているのかなあ…。

以下、あまり肯定的な感想ではありませんので、「この記事は読みたくないかも」と思った方は、こちらでアマゾンに寄せられたレビューをご覧くださいませ→星の王子さま (新潮文庫)

「おとな=つまらない存在」という考えに違和感

私が「星の王子さま」で一番共感できなかったのは、作品全体に漂う「こどもはみずみずしい感性に満ちているけど、大人はつまらない存在」というメッセージです。

おとなは数字が好きだから。新しい友だちのことを話しても、おとなはいちばんたいせつなことは何も聞かない。

というフレーズがあり、おとなは新しい友だちが「どんな声をしてる?」「どんな遊びが好き?」ということより、「何歳?」「何人きょうだい?」などと聞き、その子のことがわかった気になる…と続きます。

これ、「だよね~!」と共感できますか?

私が子どもだった頃、私の周囲にいた子どもたちだって、「どんな声?」という質問より「何歳?」という質問の方をしていたように思います。

私は子どもの頃の方が数字が好きだった

数

確かに感性(この言葉で適切かどうかわかりませんが)は、実用的なこと以上の何かを、人生に与えてくれます。それには同感です。

ですが、そういったものは「子どもの方が大人より優れている」という考え方は、幻想だと思うんですよね。

自分が子どもだった頃、子どもだった私は今よりもずっと自分中心的で、周りを思いやることもできなくて、他の子どもたちと数で表される何かを競っていました。

そんな子どもだった私ですが、年々数を競うことはどうでもよくなり、今ではすっかりマイペース人間です。

子どものころ好きじゃなかった友達も、年を重ねるうちに嫌いじゃなくなったことが多いです。

私は自分の経験から考えると、子どもの方が大人よりエゴが強いという感覚があります。

エゴが強いからこそ、自分の何かを表す数値の高さを気にするのは、むしろ子どもの方なんじゃないかと。

私に関して言えば、テストの点数やかけっこの順番などは、小学校低学年だったころが一番気になっていました。

大事なものは数字でなく、たとえばテストであれば「何点とれたか」より「理解できたか」であり、かけっこであれば「何位だったか」より「ベストを尽くしたか」の方であることに、私はだんだんと気づいていきました。

「周囲が私を(わかりやすい数字で)どう見るか」より「自分が自分に納得できるか」という生き方ができるようになったのは、大人になってからです。

少なくとも私に関して言えば、「大人の方が子どもより数字が好き」という本書のメッセージは真逆です。

キツネの唱える他者論に異議あり

キツネ

もうひとつ、「星の王子さま」に共感できないポイントがありました。

それは、作品の中でも非常に重要なシーン、王子さまとキツネが語る場面です。

王子さまがキツネと仲良くなろうとして、出会った翌日に、またキツネの所へやってきます。

その時キツネは、

同じ時間の方が、よかったんだけど

と言います。王子さまは、前日とは違う時間にキツネの所に行ったんですね。

で、同じ時間の方がよかった理由は、同じ時間に来ると決まっていれば、その少し前から嬉しくなって、時間になるとそわそわ、どきどきして、幸福の味を知ると。

そして、キツネはこう言います。

でも、きみが来るのが行きあたりばったりだと、何時に心の準備を始めればいいのか、ちっともわからない……ならわしって大事なんだ

うーん…。

私は、他者とつきあう醍醐味は、相手の行動が読めない、相手の心を縛れないということにあるのではないかと考えるので、この考えに共感できなかったです。

「絆を結ばない他者」との向き合い方は?

バラ

このキツネとの対話は、「他者が自分にとって特別になるのは絆を結ぶから」というメッセージが根幹にあると思います。

キツネと対話したあと、王子さまは、自分の星に残してきた一輪のバラと、地球にあるたくさんのバラをくらべて、「ぼくのバラ」はその他大勢のバラとは違い、自分にとって特別であることに思い当たります。

そして

あのバラだけ、彼女だけが、きみたちぜんぶよりたいせつだ。ぼくが水をやったのは、あのバラだもの。

と、その他大勢のバラに向かって言います。

私はこのへんの話も、あんまり心に響かなかったな~。

面倒を見たバラ、飼っていたペット、一緒に過ごした家族・友達が大切なのは当たり前のことで、そういう大切なものは他の存在と区別されるのも当たり前のこと。

私はそれよりも、「絆を結ばなかった他者に対して人間は何ができるのか?」という問題の方が深くて難しいと考えています。

これからグローバル化は進むでしょうし、先進国では少子化でも地球全体は人口増なので、限られた資源の分配についての議論は避けられないでしょう。

その時、私たちにつきつけられるのは、絆を結ばなかった他者に対する付き合い方をどうするか?ということだと思うんですよね。

このテーマについては、話の終盤に出てくる王子さまの有名なセリフで、少し触れられてはいると思います。

ぼくの星は、夜空いっぱいの星の中のどれかひとつになるものね。そうしたらきみは、夜空ぜんぶの星を見るのが好きになるでしょ…

絆を結んだ他者との人間関係は、絆を結ばなかった他者を大切にすることにつなげられるのでは?という発想ですね。

まとめ

そんなわけで、「星の王子さま」ほどの名作をディスる記事になってしまいました。

でも批判的な感想でも、何も感想がないよりは読んだ甲斐があったってことですよね。

批判的にではあっても、これだけのことを考えさせるという意味では、やはり普遍的なテーマを扱った世界文学だな~と思います。

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