中島みゆきさんの楽曲「あしたバーボンハウスで」の歌詞について考えてみます!
「あしたバーボンハウスで」はどんな歌?
「あしたバーボンハウスで」は、中島みゆきさんが1985年に発表した「miss M.」というアルバムの2曲目に収録されている楽曲です。
この「miss M.」というアルバム、私のお気に入りです!
シングル発売はされていなくて、ベスト盤にも収録されていません。
中島みゆきさんのファン以外には、あまり知られていない楽曲です。
淡々としたマイナーコードの曲ですが、心地よいテンポ・曲調で、少し謎めいた歌詞と相まって雰囲気のよい楽曲です。
いったい何をテーマにした歌なのか…というと、コレが難しいんですよね!
難しい上に、「バーボンハウス」なるものに入ったこともない私が解釈するには手にあまる歌詞…なんですが、気楽にわかる範囲で考えてみようと思います!
まず「バーボンハウス」って何?
さて、お酒が好きではない私は入ったこともない「バーボンハウス」って、いったいどんなお店?
ネットで検索してみても…「バーボンが飲める居酒屋」程度の情報しかありません。
お酒飲まない私にとっては「バーボン」だってよくわからないんですけど、「バーボン」はアメリカン・ウイスキーの一種だそうです。
…要するに、ビールとかカクテルとかのライトなお酒じゃなくて、ウイスキーのようなちょっとシブいお酒をメインで出すお店ってことですかね?
その「シブさ」から連想して、大勢で騒ぐような明るい雰囲気の広い居酒屋ではなく、暗くて狭い店内にカウンターがあるバーが舞台だと仮定してみます。
「幻と待ち合わせ」ってどういう意味?
「あしたバーボンハウスで」の冒頭はこのように始まります。
あしたバーボンハウスで幻と待ち合わせ
…もう、冒頭からしてよくワカラナイっ!「幻と待ち合わせ」って…。
何とか考えてみますと、待ち合わせしている相手は「幻(まぼろし)」なのですから、おそらく待ち合わせ自体が幻です。
実際に誰かと約束しているわけではないのでしょう。
この後には
あしたバーボンハウスで幻を待ちぼうけ
…というフレーズがあります。
歌い手は、「幻」と約束はしていないのですが、「幻」を待っている=「幻」に会いたいという気持ちがあるのでしょう。
「幻」って誰のこと?
では、歌い手が会いたいと思っている「幻」とは何か。
ひどい雨ですねひとつどうですか
どこかで会いましたね
ここは、歌い手がバーボンハウスで出会った初対面の相手に、天気の挨拶から入り、お酒をすすめて、そして「どこかで会いましたね」と言っています。
…でも、おそらく会ったことのない相手…なのでしょうね。だから「幻」なのでしょう。
2番の冒頭はこうなっています。
あしたバーボンハウスは置き去りの夜の群れ
硝子戸をチラリ電話機をチラリ見ないふりで見守る
バーボンハウスに集まっているのは、「置き去りの夜」と表現されている人たち。
置き去り…昔の思い出が忘れられない、もっと言えば昔の恋人が忘れられない人たちだと推察されます。
バーボンハウスに昔の恋人が忘れられない人たちが集い、万が一でも昔の恋人がフラッと現れないかと待っている。
だけど、来るわけがない。そんな偶然が起きるわけがない。
遅いねもう1杯まだかねもう1杯
斯くして店は繁盛る
そんな昔にとらわれた人たちが、来るはずのない恋人を待ちながら「あと1杯だけ」と言いながらお酒を飲み、人々の傷心を元手にバーボンハウスは繁盛していく…と。
「手品使い」「踊り娘」が暗示するものは?
「あしたバーボンハウスで」は、「待ち人来たらず」の歌ではありますが、それだけではないと思わせるのがサビの部分です。
誰に会いたいですか手品使いが訊く
可哀想ね目くばせひとつ 踊り娘生き写し
「手品使い」「踊り娘」というキーワードが出てきましたね。
居酒屋に疎い私は、「バーボンハウス」なる店は手品師とかダンサーがいるショー付きの居酒屋なのかと思っていましたが、そうではないようなので、「手品使い」「踊り娘」は何かの比喩表現なのでしょう。
手品使いは「誰に会いたいですか?」と尋ねる。
踊り娘は誰かに「生き写し」で「可哀想ね」と目くばせを送る。
「誰に会いたいですか?」の答えも、誰に生き写しなのか?の答えも、やはり古い恋人…ではないかと思います。
では「手品使い」と「踊り娘」は何なのか。
難しいのですが…こういう解釈はどうでしょうか。
2番にこのようなフレーズがあります。
あしたバーボンハウスはしどけない夜の歌
どこへ行きますか長い旅ですか いいえここでひと晩
「しどけない」は無秩序で乱れたさまを表す形容詞。それに加えて「ここでひと晩」という言葉。
バーボンハウスに集まっている人々は、昔の恋人に面影が似ている相手を探しワンナイトの関係を求めている…ということですかね。
「手品師」=男性。「踊り娘」=女性と考えてみます。
昔の恋人に似た人を探している女性に「手品師」が近づいて、昔の恋人に似た振る舞いをし(=「誰に会いたいですか」)、ワンナイトを狙う。
昔の恋人に似た人を探している男性に「踊り娘」が近づいて、昔の恋人に似た振る舞いをし(=「生き写し」)、ワンナイトを狙う。
で、狙われている方だって、昔の恋人に会いたい気持ちを何とかしたいわけなので、望むところ。
バーボンハウスには淋しさを紛らわすためにワンナイトの関係を求める男女が集まり、お互いに相手を手段化しているけど、ウィンウィンである…そんな大人の世界が描かれているのかなと思います。
どうして「あした」バーボンハウスなの?
最後に残る謎はココです。
なぜ「あした」バーボンハウスで待ち合わせなのか。
バーボンハウスで出会った他人とワンナイトの関係を持っても、本当に会いたいのは古い恋人なので、結局、渇望は満たされない。
満たされないから「あした」もバーボンハウスへ行く。
でも、やっぱり満たされないから次の「あした」もバーボンハウスへ行く。
斯くして店は繁盛する…というスパイラルが成立しているのかな、と。
また、過去の思い出にとらわている人間が、明日という新しい日が来るのに、それでも過去にとらわれていることの切なさも含んでいるのかな…と思います。
まとめ
「あしたバーボンハウスで」の歌詞について考えてみた記事でした。
解釈の難しい大人の歌で、的を射た考えができているかは全然自信ありませんっ!
ですがしっかり意味はわからなくても、何となく「いい雰囲気の歌だな~」と聴いてしまうのが、「あしたバーボンハウスで」の魅力だなと感じます。