オリンピック開発の余波を受けて、取り壊されることになった神宮第二球場。
高校野球オタクの私ですが、自分でも驚くことに神宮第二球場で高校野球を見たことがないんです。
東京より神奈川・埼玉が好きな時代が長く、東京の中では東東京より西東京というファンなので、意外と縁がなかったんですね。
今年の夏大会の抽選会中継で、解説者とアナウンサーが「取り壊される第二球場は哀愁がある」「哀愁しかないですけどね~」と掛け合ってたのが面白く、
よし!取り壊される前に哀愁あふれる神宮第二球場に行こう!
と、決意しました。
神宮第二球場が野球場として使用される最後の11月3日は、東京大会秋季大会準々決勝・日大三―帝京のビッグカードとなり混雑が予想されたので、1日前の11月2日の準々決勝を見に行きました。
神宮第二球場のやる気のない外観
神宮第二球場は国立競技場駅や信濃町駅から行くと、神宮球場に隣接して、手前の方にあります…もうしばらくで「ありました」という過去形になりますね。
実はこのフェンスの向こうが第二球場なのですが、照明がないため、野球場がある感じがしないですよね。
昔、神宮球場に大学野球を見に行ったとき、まだ試合が始まっていないのにブラバンと歓声が聞こえてきて、「え?何で試合が始まっているの?」と焦ったら、第二球場からの歓声だった…なんてことがありました。
これが第二球場の外観…昭和の時代に建てられたみたいなビルみたいな建物…「第二球場」って看板からして、やる気が感じられませんよね。
でも、一応反対側に周ると…
もうちょっとだけ、野球場としてやる気のある姿を見せてくれます。
神宮第二球場のやる気があったりなかったりする内部
さて、今日は神宮第二球場最期の日の前夜祭…いや、夜じゃないですね前昼祭で、
神宮第二はキャパが5000人くらいしかないから満員で入れないかも…。
と恐れて、試合開始30分以上前に球場に到着しました。
東京大会は、神奈川や埼玉、千葉ほどはお客さんの出足がなくて、いつもなら試合開始に間に合うように行けばOKなんですけどね。
しかし、思ったほどは混んでいませんでした。1階席は8割程度埋まっているけど席は探せばあるし、2階席は余裕がありました。
やっぱり東京の高校野球ファンの出足は鈍いなあ。まあ神奈川とかが異常で、この方がゆっくり家を出れるからありがたいんですけどね!
それにしてもこじんまりとした球場。
内野席しかなくて、普通の球場なら外野に設置される、各高校の応援席…甲子園の「アルプス席」も内野にあり、ぎゅっと凝縮されています。
内野しかないので、見渡せばいろんな人の顔が見えます。元甲子園球児だったスカウトさんの顔があったり、「第二は哀愁ある球場」と言っていたJCOMの解説者さんの顔が見えたり。
席が一人ずつ分かれていて、座る部分に凹みがあるのはありがたいです。
が、勾配が少ないのか、少し大きな人が前に座ると、グラウンドが見えにくいです。
グッドなのかバッドなのかわからない第二球場の内野席の作り…。
でっかい2階席があり、そのおかげで内野席の大半は影になり、UV対策的にはありがたいのですが…大きな地震とかあったら2階席が落ちてきそうでコワイ…。
そういった耐震性の不安もあって、取り壊しなんでしょうねえ。取り壊しじゃなくて作り変えればいいのに、新国立競技場が大きすぎてスペースなくなっちゃったのかな…。
しかし、このデカい屋根のために、ただでさえ普通の球場より近くにいる応援団の声が響き渡って、雰囲気がよいです。
第二試合には城東のブラバンが来てましたが、迫力ありました。
このくらい狭い球場では、習志野ブラバンの音量は絶対ムリ!
内野席しかないのは観客がいるべき場所に…
さて、なぜ第二球場には内野席しかないのか。
「席がなくても、他の球場みたいに外野を開放して芝生に直接座らせればいいじゃない?」と思いますが…
ここからが第二球場が日本で唯一無二(?)の野球場である醍醐味。
一塁側ベンチ後方には奇妙な建造物が…ハイ、ゴルフの打ちっ放し練習場です。
で、反対側の三塁側と外野は、ゴルフボールが飛んでいかないように高ーいフェンスが張り巡らされていて、観客が座れるスペースなど無し!
第二球場は、野球の試合が行われていないときにはゴルフ練習場として営業しているんです。
実際に私が観戦に行った日も、「ゴルフ営業は高校野球の試合後に再開します」と書いてありました。
ゴルフ練習場と野球場を兼用する球場なんてナイスアイディア!…ではなかったので、こんな形の球場は普及しなかったんでしょうね。
ちなみに外野観客席のない第二球場で、ホームランはどうなるのかというと、外野手が取れない高さに打球が飛んで、外野フェンス(ネット)に当たればホームランです。
ホームランボールはグラウンドに必ず跳ね返ってくるというシュールさです…。
ハゲた外野が放置されている件
さて、第1試合は国士館―修徳。
国士館のシートノックですが、外野の人工芝が…規則正しく幾何学的にハゲている…。「もう取り壊すんだから修復しなくていいや」という放置ぶり。
なんか東京っていうより、適当でお気楽な江戸の精神を感じます。
翌日の神宮第二ラストゲームが、日大三―帝京の古豪対決になったのを「運命」という人がいましたが、確かにキチッとした野球をする関東一や東海大菅生には、似合わない球場かもですね。ちなみに国士館も似合わないですね。
何となく大らかな野球をする三高とか帝京、それから二松は似合う…。
手書きのスコアボードを見れて満足!
私が神宮第二球場で最も楽しみにしていたのは、今や絶滅危惧種(そして絶滅に向かう)の手書きスコアボード!
わーい!手書き!時代に取り残されたものだけが醸し出せる哀愁!
芸が細かくて、スタメンアナウンスに合わせて、名前がはめ込まれていきます。そこまでしなくてもよさそうなんですが、プライドオブ第二なんでしょうね。
しかし、
突然の代打には対応できません。修徳(左側)の4番打者が空白になっています。
第二球場で代打に出た選手は、スコアボード係さんのことを考えて、初球を打たずに粘ってあげなきゃだめですね。打席中に名前の用意が間に合うように!
日本中探せば手書きのスコアボードはあるのでしょうが、高校野球の結構大詰めの試合が、手書きスコアボードで行われることは本当にマレでしょうね。
ちなみにヒット数やエラー数を表示する場所はなく、それどころか合計点数を表示する欄もなく、15回の場所に合計点数をはめこんでいます。
コレ、最初にスコアボードを作ったときの失敗だな…。「あ!合計点数入れる場所を作るのを忘れた!」ってヤツ。
ワイルドな2階からは隣の神宮球場が見えすぎる
2階席からの影のためか、1階席での観戦はだんだん寒く感じてきました。
そこで、さんさんと日光に照らされている2階席に移動しました。
第二球場の2階は、かなり高い位置にあります。グラウンドを見渡すことができて、真ん中に座れば、1階席よりも野球自体は見やすいです。
かなり真ん中から見ると、投手の変化球の曲がりも見えて、非常に面白かったです。
ただし座席がワイルドで、座席というより階段です。階段に腰掛けての観戦という感じで、背もたれに当たる部分には、上の段に座っている人の足があるという…。
満席の場合は大変そう…。
そして、1塁側のゴルフ練習場の向こうに見えているのは、立派な照明と電光スコアボード…ハイ、神宮球場です。
神宮第二球場の2階からは、神宮球場で行われている試合が見えてしまうというのは聞いたことがあるのですが、ちょっと驚くほどはっきり見えました。
ちょうど神宮球場では早慶戦が行われていて、試合自体は近くまで行ってのぞかないと見えませんが、神宮球場のスコアボードは普通に2階席で第二球場の試合を見ていても視界に入ってくるので、試合経過はバッチリ見えちゃいます。
うーん。二つの球場で行われている、そこそこのレベルの野球の試合がどちらも見えてしまうなんて、こんな場所なかなか無いでしょうね。
試合を無料でのぞき見されちゃう神宮球場からすればたまったものではないでしょうが、この緩さが面白いというか。
最近の高校野球はSNS時代を反映してか、ちょっと緩さというか、人間くささが許されなくなっているように感じています。
全選手、全監督、全関係者がスキのない聖人じゃなければいけないみたいな。
第二球場の2階のような、あまり褒められたものではない、だけど誰かを傷つけるわけではない…そんな遊びの空間がなくなることは、時代の空気を反映しているような気もしてしまいます。
さよなら神宮第二球場!
そんなわけで、最初で最後となった神宮第二球場での野球観戦でした。
私は神宮第二球場は最後に記念に入場した感じですが、長年神宮第二球場で観戦された方は、寂しさがあるでしょうね~。
この狭い神宮第二球場がなくなることで、東京、特に東東京の高校野球は変わってくるのでしょうか。
無くなるものを惜しみつつも、新しい東京の野球を楽しみにしたいと思います。
神宮第二球場さん、長年お疲れさまでした!