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「私が打たれても代わりはいるもの…」高校野球の複数投手制の難しさ

マウンドとボール 高校野球
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横浜高校の松坂が延長17回を投げ抜いたころは、高校野球界には、チームの大黒柱である「エース」を中心としたチームが多かったです。

甲子園の試合をテレビで見ると、マウンドに上がっている投手の背番号は、だいたい「1」でした。

現在では、一人の投手に負担をかけないようにと、複数投手制で戦うことが、常識となりつつあります。

そんな「複数投手制」について、創成館高校に関する記事からインスピレーションを受けた、書き散らし文です。

複数投手制の象徴に見えたセンバツの創成館高校

2018年の春の選抜大会では、能力の高い投手を4~5人そろえた、創成館高校が話題になりました。

大阪桐蔭や横浜、東海大相模のような、中学時代の有名選手が集められる高校球界のピラミッド頂点のようなチーム、いわゆる「超」強豪校では、これまでも質の高い投手が何人もそろうことはありました。

しかし創成館高校は、最近力をつけている強豪校ではありますが、さすがに「超」強豪校ではありません。

そんな創成館高校が、すばらしい投手を次から次へとマウンドに送り込む姿は、複数投手制の時代を象徴しているようで、選抜で非常に印象に残ったチームでした。

創成館高校は、春の選抜ではベスト8まで進みましたが、準々決勝では智弁和歌山に大逆転劇を許して敗退しました。

智弁和歌山の大逆転劇のバックには、いつものように魔曲「ジョックロック」が流れ、甲子園のお客さんもジョックロックに大興奮するという、アウェイとなった甲子園で、少し気の毒に感じる負け方でした。

参考 ジョックロックに関してはこちらでくわしく書いています

この試合、2点差でリードしていた9回裏にマウンドにいたのが、エースの川原投手。

決して浮き足立った投球には見えなかったのですが、甲子園全体がジョックロックに包まれた中、2アウトまでこぎつけながら同点に追いつかれてしまいました。

ここで、創成館は投手交代。

私はこの投手交代について

えー!代えちゃうんだ!こんな試合展開で『最後はエースに託す』じゃないんだ!時代は変わったなあ~。

と思って見ていました。

川原投手は、高校ジャパンの候補に選ばれるような好投手。この試合は3番手での登場で、それほど球数を投げていたわけではありませんでした。

こんなにアウェイで厳しいマウンドは、エースナンバーを背負った投手の正念場だと思ったのですが、不服な様子も見せず、次の投手にマウンドを引き継ぐエースの姿に、

創成館の複数投手制は徹底しているんだな~。

と、感心したのです。

複数投手制=エース不在?

その試合の後、創成館高校の投手制に関する興味深い記事を、ナンバーのウェブサイトで見つけました。

タイトルからわかるように、「複数投手制ゆえに、チームの危機を救うような大黒柱、つまりエースが存在しないというジレンマ」について書いてあります。

「創成館はエースを特別扱いしないチームなんだなあ」と思った私の感想とはうらはらに、記事の中で監督さんが、まったく逆のことを言っていました。

ちょっと、一部の言葉を引用してみますね。

「夏までには、先発完投できるような大黒柱となってくれる投手をつくりたいですね」

「本当はみんなに『俺が、俺が』になって欲しい。交代するときも、あまりにも素直に応じるので、『まだ投げます!』ぐらいのことを言って欲しいんです」

「私が打たれても代わりはいるもの…」ではダメなんだ!

「エース」っていったいどんな存在?

高校野球ファンには、2014年の夏の甲子園で浦和学院の小島投手が、投手交代の動きを見せたベンチに向けて、「代わりたくない!」という風に、首を振ったシーンがよく知られています。

あの場面は9回、小島投手は180球以上を投げ、足がつった状態でした。

イヤイヤと首を振っても、もちろん交代させられましたが、「マウンドを降りたくない」という強い意思表示は、「これぞエース」と多くのファンの胸を打ちました。

「エース」という非科学的で、どこか根性論的な存在を、あまり好ましく思わない人もいるかもしれませんが、「エース」の役割は、ひとりで何百球も投げ続けることではありません

チームの大黒柱として、チームを勝ちに導く存在。エースとはそういうもので、一発勝負のトーナメントである高校野球では、こういう非科学的な存在が、チームに戦う力を与えることもあります。

複数投手制が常識となった現在でも、チームに複数の投手を持ちながらも、「エース」という存在を大事にする強豪校も数多くあります。

広陵の監督さんが、2017年決勝の先発を不調だった背番号1の平元に任せた理由を聞かれて「広陵のエースだからです」と答えていましたね。

これからの高校野球に複数投手制は必要ですが、だからといってエースという存在をチームに欠いてしまっては、チームにここぞという時の馬力(非科学的な力ですが)のようなものが不足するかもしれません。

夏の創成館はそれからどうなった?

野球のグローブ

さて、監督が「大黒柱をつくりたい」といっていた創成館ですが、長崎大会決勝では、エースの川原投手が完投勝利しました。

川原投手をエースとして大きな柱にしつつ、複数の好投手でチームを支えていく…という方向で、監督さんは、春の敗戦後の言葉通りのチームを目指したのだと思います。

春ベスト8ですから、全国制覇も見すえての夏の甲子園、初戦で先発した川原投手は不調でした。

春の創成館であれば、1失点したところで投手交代していたのではないかと感じましたが、3失点までエースが投げ続け、後続の投手陣も打たれて、まさかの0-7の敗戦となりました。

相手は、新星の2年生速球派、西投手を擁する創志学園でした。

西投手はMAX149㎞をマーク、16奪三振で、これぞエースという完投勝利。新しいスターの誕生に高校野球ファンは盛り上がりました。

その裏で、複数投手制とエースの両立という難しい課題に取り組み、この年には結果を出せなかった創成館。

この試合だけ見て、「やっぱり高校野球はひとりの絶対的エースがいてこそだな」と結論づけるのは、もちろん早計です。

創成館が今年取り組み、結果(勝利)という形で答えを出せなかったこの難しいテーマ。また来年以降の創成館でも、他のチームでも、ぜひ追い求めてほしいな、と思いました。

2018年の創成館メンバーのみなさん、お疲れさまでした!おもしろいチームを見せてくれてありがとうございました。

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