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手塚治虫「火の鳥・太陽編」感想・レビュー!最終巻だけど…ぶっちゃけあんまり面白くない…かも

手塚治虫作品
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手塚治虫の火の鳥シリーズを順番に再読しています。

今回は最終巻となる「太陽編」です。

太陽編は「火の鳥ルール」から外れた作品

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「火の鳥・太陽編」は、火の鳥シリーズの中で最後に描かれた作品です。

そして、この太陽編は他の火の鳥作品と3つの点で大きく異なっています。

「太陽編」の特徴
  • 物語が長い
  • 火の鳥シリーズの奇数巻は過去、偶数巻は未来が舞台で、巻が進むと現代に近づくという構成から外れている
  • 7世紀と21世紀という2つの時代が舞台となっている

太陽編は、角川文庫版だと上・中・下と3巻に分かれていて、他の火の鳥作品とくらべて格段に長い物語です。

でもまあ、火の鳥シリーズには羽衣編のように格段に短い作品もあるので、物語の長さはそれほど気にしなくてもよいのかもしれません。

気になるのは、太陽編が火の鳥シリーズの時間軸の構成から外れていることですね。

火の鳥シリーズでは1巻の黎明編が3世紀、2巻の未来編が35世紀、2巻のヤマト編が4世紀、4巻の宇宙編が26世紀…と、奇数巻が過去の話、偶数巻が未来の話で、巻が進むにつれ現代に近づいていきます。

12巻目にあたる太陽編は未来のお話…のはずなのですが、いきなり7世紀の白村江の戦いの頃のお話がはじまります。

太陽編では7世紀の話に並行して、21世紀の話も描かれます。

10巻の生命編が22世紀のお話なので、未来サイドの順番として考えるとおかしくないので、太陽編のメインは21世紀の方のお話だと考えるべきなのでしょうかね?

しかし、太陽編の物語は21世紀より7世紀の方がページ数が多く、かつ丁寧に描かれている印象があり、21世紀の物語がメインだと感じられないです。

「太陽編は火の鳥シリーズの時間構成に従っている」と主張することもできなくはないですが、私の感想だと「時間構成から外れた物語」という印象の方が強いです。

太陽編で描かれるテーマは「宗教戦争」

ここからは「火の鳥・太陽編」のネタバレを含みますのでご注意ください!

太陽編のテーマは非常に明確で、宗教戦争です。

7世紀の壬申の乱では、天智天皇&大友皇子VS大海人皇子(のちの天武天皇)という構図になりますが、この構図が精神世界では仏教VS土着の神々という形を取ります。

21世紀が舞台のお話の方では、火の鳥を崇め奉る光一族と、その信仰を受け入れないシャドーが戦います。

で、7世紀の方も21世紀の方も、最初は信仰の自由を求めて戦っていた側が、勝利すると自分の新しい宗教を打ち立ててその信仰を強要する…と。

宗教戦争は現在でも解決できない人類の問題ですが、火の鳥はこう言います。

宗教とか信仰ってみんな人間がつくったもの。そしてどれも正しいの。ですから正しいものどうしのあらそいはとめようがないでしょ。

真理を突いていますよね。

お互いに「自分が正しい」と思っているわけですから、どちらとも引けないわけです。

ただ、私は宗教戦争というものは、後からつけられた理屈なのではないか…なんて思うこともあります。

宗教のために戦っているのではなくて、逆に戦う大義名分として宗教が持ち出されているだけなのではないか…。

戦争は人を殺す行為を含みますから、直感で「正しくない行為」と考える人が多いでしょう。

そんな戦争を正当化するために、手っ取り早く持ち出しやすいのが宗教ではないかと。

「神が望む聖なる戦い」と位置付けると、戦争はとたんに正義の色を帯びて見えることでしょう。

そしてこれからの時代は、戦争の大義名分として利用される宗教は、もっと巧妙なものになっていくのではないかと感じます。

明らかな宗教の形はとらず、何らかの物語性を帯びた、一見科学的に正しそうなイデオロギーとして。

第二次世界大戦の時代の全体主義は、それに近いんじゃないかと感じます。

「人間には信仰の自由があり、自分は宗教戦争などには加担しない」と信念がある人…つまり私みたいな人間ほど、一見宗教には見えないイデオロギーに注意しなければならないのかもしれません。

太陽編は…ぶっちゃけ面白くない…

さて…太陽編ですが…実は、あんまり語ることがありません。

大好きな手塚治虫さんの大好きな火の鳥シリーズなので、こんなこと言いたくないのですが…私は「太陽編だけは何度読んでも面白くない」のですよ…。

何でだろう…。

宇宙編とか望郷編は、納得いかないシーンはあるのですが、物語全体としては面白いです。

しかし太陽編は、最後まで読むのが苦痛なほど面白くないです。

その理由をいくつか考えてみますが、おそらく一つは火の鳥シリーズにしては珍しく、正義と悪がはっきり分かれた描き方が見られること。

人間世界はそれほどまででもないですが、精神世界の狗族VS仏教では、仏教の神々があまりにも悪役です。

手塚治虫の物語は単純な善悪二元論は少ないので、太陽編のこの描き方には驚いてしまいます。

それから、ヨドミが不死の人間である設定も面白くないですねー。

ヨドミの魂は狗族のマリモの生まれ変わりということなのでしょうが、だからと言って不死の身体を持っているのは飛躍しすぎていて、読んでいてポカーンという感じです。

あとは細かい人間描写がいろいろ雑に感じます

十市媛が犬上に惚れる場面、スグルとヨドミが急に愛し合う場面、教宣局長がスグルのお姉さんのユリカを殺す場面など…何か単に物語が進んでいるだけという感じで、登場人物の感情にリアリティがないんですよね。

太陽編が描かれたのは1986~1988年で、手塚治虫の晩年です。

「筆力が落ちたのかな?」とも思ってしまいますが、だいたい同時期に描かれた絶筆の「ネオ・ファウスト」や「グリンゴ」などはそれまでの手塚作品と同じように面白く読めます。

ぽこ
ぽこ

そう考えると、私と太陽編の相性が悪いんだろうな…。

まとめ

というわけで、すみません!「火の鳥・太陽編はあまり面白くない」という率直な感想でした。

ですが、私の周囲の反応だと、特に太陽編が不人気ということはないです。

太陽編は火の鳥シリーズの最終巻に当たります。

一つ前の異形編まで読んで太陽編まで読まないなんてことは無理だと思いますので、私の「面白くない」は「そう思う人もいるんだ~」くらいに流して、ぜひ火の鳥は最終巻まで読んでみてください!

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