「働きたくないイタチと言葉がわかるロボット」を読み終わりました!
今まで読んだAI関連の本の中で一番興味深く読みました。
さっそく、その感想を!
動物たちの寓話で人工知能の言語理解を解説する本!
この本を読む前は、
働きたくないイタチが、言葉がわかるロボットに仕事をさせることに四苦八苦する本なのかな?
と思っていましたが、本の内容はその前の段階で、「働きたくないイタチが言葉が分かるロボットを作ろうとして苦労する」話です。
イヤもう、私も「働きたくない人間」なので、ぜひぜひイタチたちの試みがうまくいってほしいと思いながら読みました(笑)。
「言葉が分かるロボット」ができれば、「ごはん作って」「お皿洗って」などの家事から、「コピー取って」「書類チェックして」などのオフィス事務まで、ロボットがこなしてくれますからね。
イタチ以外の動物も登場し、「これなら『言葉がわかるロボット』と言えるのではないか?」というロボットを次々に作りますが、どのロボットも言語を理解する際につまづく場面が出てきます。
そのつまづきの原因を、人工知能の言語理解に絡めて解説してくれるので、非常にわかりやすかったです!
言語の理解はどうしてこんなに難しいのか
読み終わってすぐに思った感想は、
言葉を理解することって、実は非常に複雑な仕組みなんだな…
ということです。
動物たちが作る、AI搭載のロボットが、なぜ言葉を理解するのにこんなに苦労するかというと
この2つが大きな障害なんだろうな…と感じました。
本の中に他にもいろいろな課題が出てきたのですが、個人的に解決が難しそうだなあ…と思ったのはこの2つです。
だって、コレって、私たち人間でも難しいことですよね。
たとえば「バカじゃないの」というセリフは、言われた相手や場面によって悪態のこともあれば、逆に愛情表現のことだってあります。
ですが、この相手の意図を読み間違えて、人間関係がムダにこじれた…という経験は誰にでもあるでしょう。
また、J-POPでよく「愛って何?」みたいな歌詞がありますが、この問いに明確に答えることができる人はなかなかいないでしょう。
もし答えられる人がいたとしても、人によって解答はかなり違うのではないかと予想されます。
言語というものは、「人間らしい曖昧さを持つもの」なんですよね。
人間ですらこの曖昧さに振り回されているわけですから、機械と言語の相性は良くないのでしょう。
言語は、機械に単純に入力できる記号ではないのだと、実感しました。
人工知能を作ることは人間を理解すること?
また、この本を読んで思ったのは、「人工知能を作る試みは、同時に私たち人間が私たち自身を知ろうとすることなんだな~」ということでした。
人工知能は、人間の脳をモデルにしているところが大きく、人工知能が言語理解でつまづくたびに、「じゃあ私たち人間はどうやってその言語を理解しているんだろう?」と考えさせられます。
たとえば本の中で、恋人からプレゼントをもらった女の子が
これ、前から欲しかったやつじゃない!
と、嬉しさで感嘆の声を上げた時、人工知能はこのセリフを「これは前から欲しがっていたものではないので、うれしくない」と誤解してしまいます。
確かにこのセリフは、字面だけみると否定文に見えますよね。
ですが私たち人間は、女の子の声音とか表情とかで、否定ではなく感嘆なのだと判断できます。
人間は言葉を理解する時、言葉がもつ純粋な意味だけでなく、その言葉が発された場面・雰囲気・ニュアンスから理解しているのだということが、人口知能のつまづきから見えてきます。
人間がAIを作るのは、結局は太古の昔から続いている、人間の「汝自身を知れ」という科学・哲学の延長上にあるんだなあ…と感じました。
まとめ
さて、グダグダと思ったことを書き散らしてしまいましたが、最後にコンパクトにこの本についてまとめておきますね。
動物たちの寓話を通じて、AIが言語を理解する仕組みを解説していて、物語調になっている分、非常に読みやすいです。
特に文系の人には、他のAI関連本よりも、とっつきやすさがあると思います。
内容は簡単とは言えませんが、なるべくわかりやすいように書かれていて、高校生以上であれば、文章自体は難解ではありません。
何かAI関連の本を1冊読みたいという方、AIの技術的な話ではなく本質を知りたいという方、言語に関する哲学に興味がある方にはぜひおすすめです!