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手塚治虫「鳥人大系」の感想!人類なら一度は読みたいスゴイ漫画

漫画・コミック
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私は手塚治虫漫画のファンで、特に手塚治虫が中期以降に描いた、大人向けの漫画が好きです。

家の本棚には高校~大学の頃に集めた、手塚治虫の漫画文庫がたくさん並んでいます。

時々引っ張り出して再読してしまうのですが、先日「鳥人大系」を久しぶりに読みました。

「鳥人大系」は1970年前半の作品なのに色褪せない!

「鳥人大系」は1971年~1975年にかけて「SFマガジン」に掲載されていた作品だそうです。

手塚作品の多くがそうなのですが、数十年後に読んでも、物語の面白さや深さがまったく色褪せません。

手塚作品が色褪せない理由のひとつが、作品のテーマが普遍的…「どの時代・場所で生きている人間にも共通するテーマ」であることです。

「鳥人大系」に描かれているテーマは?

鳥人大系に描かれているテーマは一言では表せない部分もありますが、大きなテーマの一つが「知的生命体の暗部」でしょう。

ここからは作品のネタバレも含みますので、未読のかたはご注意ください!

宇宙のエライ方々の会議で「地球の進化は間違っている」という意見が出されます。

「人間が知的生命体として地球を牛耳っているけど、星のピラミッド頂点に立つ生き物は、飛翔能力があるべき」と考える博士が、会議で力説します。

地球の進化が間違っている証拠に、人間は大規模な戦争を繰り返し、地球環境も破壊しまくっていると。

ちなみに実はこの博士、鳥族出身です。この意見が純粋な科学的データに基づいているようで、実は「身内かわいさ」というのも、作品の一つのテーマに感じます。

この博士の意見が会議で採用され、地球は人為的(正しくは「宇宙人為的」ですが)に進化が是正されることになりました。

地球に生息している飛翔能力を持つ生き物「鳥」に、知能を与えるための作戦が発動されるのです。

空を飛ぶカモメ

で、頭がよくなった鳥がどんどん人類を凌駕していき、最終的には人類を家畜・ペットにしてしまうと。

ですが鳥社会でも差別や犯罪が横行し、鳥はほとんど人類の退廃と同じ道をたどっていく…というストーリーです。

「人類の家畜化」というと、馬が人間をペットにするガリバー旅行記を思い出します。

ガリバー旅行記の馬たちが善良なのに対し、鳥人体系の鳥たちは人間と同じように欲深い存在というところに、手塚治虫の哲学を感じます。

「鳥人体系」は壮大さとコミカルさが同居する物語

鳥さんたち

「鳥人体系」はテーマが非常に壮大です。

鳥たちが人間と同じように、羽毛の色で差別したり、種族の違いでいがみ合ったりしていく姿は、人類として身につまされる思いがします。

鳥人たちの愚かさは、そのまま人間の愚かさなんだなあ…と。

手塚治虫は鳥人の世界を人間社会そっくりに描くことで、私たち読者に、外から自分たちの社会(のようなもの)を冷静な目で見つめさせてくれます。

とはいっても、ものすごく堅苦しい話でもなく、聖ポロロ伝なんかは、特定の宗教のストーリーそっくりでちょっと可笑しいです。

可笑しいけど、

だが彼ら[鳥人]たちの社会が複雑化されるにつれ(中略)ある疑惑が下層鳥人たちに生まれ始めた。(中略)
なんのためにわれわれは生きているのだろう?

このあたりの流れは、結構胸にグッときます。

「なんのために?」を考えはじめた鳥人たちが、「鳥は鳥らしく」を説く聖ポロロの教えに耳を傾けるあたりは、私は背筋がゾクゾクするような、物語の凄みを感じます。

「なんのために?」に答えは出ないけど、知的生命体が持つ、永遠の普遍的テーマなのでしょうね。

まとめ

手塚治虫のファンの中には、手塚作品で一番好きな作品として「鳥人体系」を挙げる人がいます。

私も、少なくともベスト5には入るかな、という作品です。

鳥人の世界を通して、私たち人間が私たち自身を見つめる。

そんな作品ですので、人類なら人生で一度は読んでおきたい作品だと思います!

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