ハンター38巻で幻影旅団結成のエピソードが明かされました。
驚いたのは、流星街に非常に立派な教会施設があること。
コレで、今まで私が流星街に抱いていたイメージは一変しました。
クロロは初登場からキリスト教的なものにこだわりがありそうだったけど、流星街の住民や他の団員は、もっと無法地帯を生きるニヒリスト的な人々だと思っていたんですね。
流星街&幻影旅団と、キリスト教モチーフは切り離させないことが確実になった気がするので、いろいろ考察してみます。
流星街では宗教政治が行われている?
38巻からわかることですが、流星街は周縁部に広大な廃棄されたゴミ山と森があり、ゴミ山が途切れたあたりにスラムのような住居が連なります。
そして中心に大きな教会があります。教会の敷地は広大で、門をくぐった後の森は庭園のように整備されていて、お墓もこのエリアにあります。
教会の建物は無法地帯の建築とは思えないくらい立派な建物で、スラムに住む人々とは結びつかない贅沢な装飾が施されています。教会というより大聖堂です。
神父さんの服装も、ボロ着をまとっている子どもたちや住民たちとは全然違う、中世ヨーロッパ貴族のようなシャレた贅沢な服装です。
ここから推察されるのは、流星街では捨てられたゴミから得られる利益の多くは、教会の運営に回されているということです。
ですが教会が搾取をしている感じはなく、人々は教会が潤って自分たちの生活は苦しいのを当然だと考えている様子。
このようなシステムが成り立つ背景として考えられるのは…
- 流星街は教会に対する信仰心がある人々が多い
- 少ない富を中央集権的に教会に集め、それを教会が流星街の人々に再配分することで生活が成り立っている
つまり、流星街はクリーン政治が行われている小さな宗教国家だと考えられます。
流星街に見られるキリスト教要素
さて、流星街を統治している教会は、キリスト教要素が満載です。
38巻でパクノダが、教会の建物のことを「全宗教会」とよんでいるので、キリスト教以外の信仰を認めないということはなさそうですし、あらゆる宗教の神様を祀っている教会ではあるのでしょう。
それでも、ゆるいながらも、大きなモデルとしてはキリスト教を採用している宗教であることが伺えます。
学がなさそうなウボォーが「裏切り者のユダ」という言葉を知っていることからも、流星街では聖書の物語が常識として知られている感じですね。
流星街は「キリスト教モデル宗教の迫害」から始まった?
ヨークシン編でクラピカとレオリオが、流星街の歴史を「最初は独裁者の人種隔離政策だった」と語っています。
これがもしかしたら、「キリスト教をモデルとした宗教の迫害」が始まりだった可能性が高いのかなと思います。
独裁者が自分の政治を邪魔しないように、信者を特定のエリアに隔離し、かんたんに出入りできないように周縁を巨大なゴミ処理場で取り囲んだのかなあ…と。
ヨークシン編によると、流星街の歴史が始まったのは1500年以上前の話らしいので、そこからどんどん信者以外の人たちも入ってきて多民族国家になったのかな、と。
今では信者以外の人々もたくさんいるけど、代々、流星街の政治を担ってきたのは教会だったのではないでしょうかね。
長老たちが哲学的(神学的)な議論好きというのも、キリスト教に似ていますしね。
ちなみにシャルナークが「シャルナーク=リュウセイ」という苗字なのは、先祖がかなり古くからの流星街の住民なのかなあ…とか。シャル自身はあまり信心深くなさそうだけど。
旅団が用いる「逆十字」の意味は?
ここで非常に興味深いことがあります。
流星街の教会はシンボルに十字を使っているのに対し、クロロは逆十字をシンボルにしているということです。
これ、クロロの相当な覚悟を表しているんだなあ…と、38巻を読んだ今になっては思います。
クロロは38巻で、「残りの人生を悪党として生きる覚悟」を抱きます。
シーラがクロロに賛同せず、クロロ自身「サラサはこんなこと望まない」と言っているように、流星街の価値観からしても間違っていることを貫く覚悟を持ったというわけです。
その意志表明としての逆十字…流星街の人々がキリスト教的な信仰を(ゆるいながらも)持っているとして、クロロも11歳まではその教えに賛同していたけど、これからは教義に背いていくという意志表明ですね。
クロロが身につけている逆十字が、クロロのファッション以外で登場しているのは私が気付いている限りでは2つ。
ひとつはシズクのネックレス。シズクは「流星街のクロロ達より年少の子」と私は考えていますが、シズクも旅団に入るにあたって、今までの教会的な価値観を捨てる覚悟を持ったのかな、と。
もうひとつは細かいですが、グリードアイランド編でチラッと描かれるパクノダのお墓だと思われる上に立てられている逆十字。
芸が細かい…と感嘆しますが、コレが逆十字なんですよね。流星街のお墓は普通の十字なのに。
旅団のメンバーは、死んでも教会のお墓に入らない覚悟なのかもしれませんね。教義を破っているので。
クロロはヨークシン編では「霊魂の不滅を信じる」と言っていましたね。その一方で、38巻では「再会のシステムが無いのだとしたら」と心の中でつぶやいている。
クロロ自身、小さい頃から教会の教えに共感する部分を持ちながら、疑問に思う部分はあったのでしょうね。
幻影旅団が「団長+12人」でなければならない理由
さて。流星街がキリスト教モチーフの宗教を持っていると考えると、「蜘蛛の手足が12本」でなければならない理由も納得できます。
シンボルの蜘蛛は、「サラサを殺した犯人をひっかけるためのネットワークを作る」ことから連想されたのだと推察されます。
蜘蛛は8本足。それに対し旅団の初期メンバーは、団長クロロ以外に、団員ナンバーが若い順にノブナガ、フェイタン、マチ、フィンクス、シャルナーク、フランクリン、パクノダ、ウボォーギンの8人。
8本足の集団にすれば蜘蛛として非常におさまりがよいのに、わざわざ12本足に「最初から」設定しているのです。
なぜ「最初から」であることが確定しているかというと、団員ナンバーですね。
団長であるクロロが全ての始まりである「0」をつけたあとの、団員ナンバー初期設定は…
- ノブナガ
- フェイタン
- マチ
- 不在
- フェイタン
- シャルナーク
- フランクリン
- 不在
- パクノダ
- 不在
- ウボォーギン
- 不在
…となっています。
もし最初は8本足で、あとから補強のために団員を補充したのであれば、4と8が空いているのはおかしいです。
最初から12人で活動することは決まっていたということですね。
なぜ12人でなければならないか…というと、やはりイエス・キリストが12人の弟子と行動したからでしょう。
38巻のクロロは「この街を自分をデザインする」という、11歳とは思えないクールな言葉を使っていましたね。
団長+12人だと流星街の人々に救世主として受け入れられやすい、自分たちも団長+12人だとその気になれる(=演じやすい)、そして何よりイエス・キリストの歩んだ道のオマージュ(反対方向だけど)としての側面もあったのではないか、と。
イエス・キリストが人類の犠牲として身をささげたように、自分も流星街のために人生をささげる…というクロロの覚悟がここにも表れているのでしょうね。
念能力というものは人々の深層心理に左右されやすい感じがあるので、クロロは団長+12人というメンバー構成が、旅団が最も力を発揮できる数字だと考えたのではないでしょうか。
ちなみにクロロの名字「ルシルフル」は、やはりキリスト教の悪魔(もとは天使だったが神に逆らって堕天使となった)ルシファーから来たのでしょう。
ネオンに占ってもらった時にもこの名字を名乗っていたので、本名なのでしょうが、クロロの人生を暗示しているのがせつなく感じます。
まとめ
以上、流星街・幻影旅団と、キリスト教モチーフの宗教との関わりについてでした。
まとめちゃうと
…これだけのことを、長文で書いちゃいましたっ!
こうなると、ボノレノフなんかは宗教が違うだろうに、なぜ旅団の活動に協力しているんだろう?と疑問が出てきますね。
ボノさんは棲み処を追われた少数民族という設定なので、流星街に流れてきて、クロロと意気投合したのかなあ…。
ボノさんとかコルトピの入団経緯は、最後まで明らかにならないようにも思いますね。